第853回 「障害ケーススタディ」

6月1日

毎年恒例の、土佐リハビリテーションカレッジの前期の授業が終わりました。
医療人としてのマナーやコミュニケーションについて学び、最後に松葉杖歴10年の中村と脳性麻痺の娘の育児を語る私の「障害体験」のケーススタディを行っています。事前に自己紹介をして質問を募り 最後の3時間でそれにお答えしていくのですが、今年も80もの質問が出て 皆さん熱心に聴いてくれました。

その後のレポートにも、それぞれの思いを綴ってくれていました。
「筒井先生と中村先生のお話を聞かせていただくと、患者さんの求めるもの、意外だと思った日常生活の辛いこと、してほしくないことを具体的に知ることができ、自分がセラピストとしての気遣いのスキルを伸ばす糧になりました」など まっすぐな思いが伺え、微笑ましかったです。

・1回目の講義の後に、自分には何ができるだろうと考えました。手助けや声をかけてあげることは相手も気を悪くしないと思って、アルバイトの時に障害で車椅子を利用している方に声をかけました。店の構造上レジがテーブル席から遠かったので、お会計をテーブル席ですませたら楽なのではないかと思い実践しました。私自身もして良かったし、相手の方も「ありがとう」と言ってくださったので、とても嬉しかったです。作業療法士は身体を治すだけではなく、心も治していくものだと思います。

気づいて考え、そして行動を起こすことが大事ですよね。早速 実践してくれた事例を読むと心が洗われるようで、本当に嬉しくなります。
さらに、こんな感想もありました。

1年の授業で「子どもを産む前に障害があるとわかったら、産むか、産まないか」という討論をしたことがあり、その時私は、その子どもの一生を背負っていける自信がないと思い、産まないと言っていましたが、筒井さんや中村さんの話を聞いて、障害があっても幸せに暮らせるんだな、自分の子どもはやっぱりかわいいんだなと思い、気持ちが変わりました。

こういう感想を頂いたのは初めてで、思わず「ありがとう!」とつぶやきました。
確かに障害児を育てていくのは大変なことも多いですが、その分ささいなことでも幸せを感じられるようにもなるとも実感しているんです。

障害があってもなくても、苦労するのも幸せになるのも、実はみんな同じ。そして幸せかどうかは、自分で決めること。そういうことが長く生きていると、だんだんとわかってくるように思います。

・患者さんの人生をみてほしいと言われた言葉はセラピストを目指す身として、何よりも意識していきたいと思っています。

そう、セラピストや医療関係者は「患者」として「障害」や「症例」だけを見がちです。でもそうではなく、「その人」全体を、その人の人生を見て欲しいのです。私たちの話がそのためのきっかけとなれば、こんなに嬉しいことはありません。

第851回 「セラピストの共感能力」

5月19日

ごくたまに、講師をしていて本当に良かった!と感じ入る瞬間が訪れます。まるで神様からご褒美を頂けた気分になり、心が大きく動く瞬間です。先日も、そういうことがありました。

ある医療系専門学校の講師として16年間関わらせて頂いているのですが、感性が豊かな時期の学生の皆さんと継続して関われるありがたいお仕事です。その中で数々のドラマがありました。

中村と私が障害体験や障害育児体験を語る授業があります。これから医療現場に出て行く学生の皆さんに、障害の実情を知り患者さんへの理解や共感力を高めてもらうため、私たちが最も力を入れているものです。ありがたいことに毎年レポートで大きな反響を頂くのですが、ベストの環境を作るため、寝る人には退室勧告をすることがあります。

昨年のAくんもそうでした。寝ているように見え注意したら20分ほど中座して、最後にはまた帰ってきました。レポートにも理由は書いていなかったのですが、後でB先生に自分の抱える問題としんどさを語ったそうです。非常にまれですが自分自身や生活環境にジレンマがある場合、私たちの語る体験談がそれと重なるのか、辛くなってしまう学生もいます。でもそれは豊かな感性、中でもセラピストになってから必須の共感能力の表れでもあると思います。

私と中村は事情がわかってから、彼のために何ができるか何度も話し合いました。もう授業は終わっていたので、機会を作らないと会えません。できれば直接話をしたかったのですが、彼自身がそれにプレッシャーを感じるのでは?と、やめました。手紙も同じです。結局、彼に役立ちそうな本だけを送ろう、と決めました。

アンパンマンの作者、やなせたかしさんの「明日をひらく言葉」という本は、やなせさんご自身の劣等感、逆境、それでも前を向くことの大切さが書かれています。「Aくんの明日をひらいてもらいたい」という願いを込めて送りました。

B先生を通じてそれを受け取った彼は驚き、私たちの思いを聞くと目に涙をため「僕どうしたらいいんでしょう?あんな態度を取ってしまったのに、こんなにしていただいて」と言ったそうです。B先生がメールに書いて下さった彼の言葉に、すべて報われた思いになりました。

1年がたち、新たな気持ちで学校に伺い、授業前に講師控え室でB先生と打ち合わせをしているとドアがノックされました。思いがけずAくんが、私と中村を訪ねて来てくれたのです。1年越しのお礼を言ってくれ、ニコニコと自然な笑顔の彼を見て、嬉しくて胸が一杯になりました。

繊細な感性は、医療の現場に出たときには患者さまに寄り添える優しさになります。あなただからできることがあるはず。頑張ってね、と握手してパワー注入!しました。

その後、移動で校舎内を歩いているとき、偶然彼を含む数名のグループと会いました。「こんにちは」とみんなが元気よく声かけしてくれる中、彼は90度近いんじゃないかと思われるほど、深々とおじぎをしてくれました。

Aくん、ありがとう。心に残る光景が、また一つ増えました。私の宝物です。

第849回「交流分析はいかが?」

4月30日

実は令和初日から1週間 東京でセミナーに出るため、今週のコラムはかなり先走って書いています。(笑)

さて、今回は交流分析のお話。名前は固いですが、心と行動によく効く楽しい心理学です。そう、交流分析を知ると、コミュニケーションが楽になるんです。

私が交流分析と出会ったのは、15年ほど前。初めて学んだ時には、「私も親に、こんな風に肯定して育てて欲しかった」と思うと同時に、当時高1だった次女の子育てにも「もっと早く知りたかった!」と、反省することばかりでした。
そしてその後は、日常生活で人間関係が存在する所すべてで応用でき、「こんなにも使える学びってあるだろうか。心理学ってすごい!」と思うベースになりました。

交流分析には7つのジャンルがあり、すべて自己成長や自己変革に役立つため、より良い生き方につながります。同時に「なるほど、あの人がああいう行動をするのは、こういう心理が働いているんだな」と他者理解にも使えるため、人財育成(子育てからビジネスまで)にも役に立ちます。(私もこれを学んでから、母との関係性がずいぶん楽になりました。)

では、7つのジャンルを少しご紹介しましょう。

1 自我状態(心のなり立ち)
人には三つの心(自我)があります。社会のルールを守ろうとしたり、相手をほめたりする親の心(P)、状況判断をする成人の心(A)、天真爛漫にふるまったり、頼ったりする子どもの心(C)です。これをさらに5つに分け、グラフ化したものがエゴグラムです。自分の特性と改善の方法を知ることができます。

2 やりとり分析(コミュニケーション)
私たちは、この三つの心を使って情報を伝えたり、相手を理解したりします。自分と相手の三つの心が、どう反応すると どういう対話になるのかを学びます。

3 ストローク(ふれ合い)
相手の存在を認める働きかけをストロークと言い、良いふれあいとは何かを学びます。人が幸せを感じるのも、不幸せになるのも原点はストロークの出し方、受け取り方によります。

4 人生の立場(人生の基本的立場)
日常生活で自分または他人に対し、また何かを決定するときに、どんな態度をとっているかを人生の立場と言います。自己肯定/自己否定と他者肯定/他者否定を自己分析し、できるだけ自己肯定/他者肯定(OK-OK)のタイプに近づくためにはどうしたらいいのかを学びます。

5 心理ゲーム(いつものトラブルパターン)
くり返される日常の人間関係での様々なトラブル。交流分析のゲームとは、必ず不快な結末になることが分かっているのに、くり返しやってしまう人間関係のトラブル行動です。なぜ人はこのような心理になりトラブルを起こし、また巻き込まれるのか、そして、そうならないためにはどうしたらいいかを学びます。

6 時間の構造化(時間の過ごし方)
時間の使い方の上手・下手が、豊かな一日か嫌な一日かの決定要因ともなります。そして人生はその一日の集約です。生きがいのある豊かな人生のために、時間の使い方について学びます。

7 人生脚本(自分で描いた人生のシナリオ)
あなたは、本当に自分が望む人生を生きているでしょうか。
私たちは、育てられた環境によって作られた行動パターンを持っています。知らず知らずのうちに縛られた行動パターンがありますが、なかなかやめられません。このような現象が起きることを交流分析では、「人生脚本」と言います。自分の人生の主役は自分であり、人生のシナリオは自分で作っています。これからの人生を悔いがないように生きるためには、どうしたら良いかを学びます。

いかがでしょうか?「これ、もっと知りたい!」と思うことがあれば、あなたは今、それを学ぶ時期に来ているのかもしれませんね。

講座は7月21日から月に1回、第3日曜日の9時~17時までです。このホームページのトップからも、講座案内をリンクしています。様々な方々が集まり、少人数制で和やかに行います。

日本交流分析協会認定の交流分析士2級の資格を取りたい方は、この講座を修了すると、2級認定試験を受けて頂くことができます。講座のお申し込みは日本交流分析協会・四国支部にして頂くことになりますが、その前のご質問やご相談などは何でも人・みらい研究所にどうぞお気軽にお問い合わせ下さいね。(088-871-0818、Email: info@h-mirai.comへ)

あなたにお目にかかれることを楽しみにしています♪