第708回 「ルネッサンスリゾートナルトのアクセシブルルーム」

8月7日

私は年に一度だけ家族旅行をしていますが、車いすの長女を連れての旅行は、図らずもユニバーサル(バリアフリー)ルーム情報にもなっているかと思います。

今回泊まったのは、こちら。徳島県鳴門市のルネッサンスリゾートナルトです。(写真はクリックで大きくなります)

708-1

大塚国際美術館に行ったのですが、車ですぐ近くの立地で良かったです。

客室数が208室、メインタワー(本館)とサウスタワー(南館)に分かれています。フロント、レストラン、売店などはすべてメインタワーにあり、サウスタワーは少し歩かなければいけません。

707-2

今回はメインタワー3階のエレベーターのすぐ近くだったので、何かと助かりました。こちらでは「アクセシブルルーム」という名前でした。

アクセシブルルームの広さは38平方メートル。本来はベッドは1つらしいのですが、介護のためにもう1つ入れて頂きました。

708-5

ここは水回りの空間が、ゆとりを持って作られています。洗面所の引き戸のドアがあり、開けると

708-2

左手のトイレには手すりがあり、ゆったりめです。

708-3

右手には洗面カウンター。ちょっとした棚は使いやすそう。

708-15

この部屋の水栓はセンサー式です。ひねらなくていいのは助かる方も多いでしょうね。

708-4

お風呂には開口部の大きい3枚引き戸、手すり付き。浴槽は深めです。

708-6

ただ ここは1つ、気をつけなければいけない点があります。隣のツインルームと2部屋での1予約なんですね。予約の際にはその辺りを再確認なさった方が良いでしょう。

708-7

こちらはつなげたもう一部屋のツインルームです。オーシャンビューでしたが、こちらは部屋に大きな柱がありました。

708-8

まあ、隣がこの景色なのでこっちに集まれば、何の問題もありませんでした。

レストランは夏休み限定のバイキングを含めて5つあったのですが、8階にあるフランス料理の「フォーシーズン」に行きました。

708-9

ちょうど長女の誕生日と重なったのを訊かれて思い出しました。記念の飲み物を4人分とケーキを出して頂いて、感謝です。

708-13

「うずらとフォアグラのクレピネット ひしほ味噌」など、珍しい料理がたくさんで楽しめました。一品の量は少ないのですが種類が多いので、満ち足りました。(笑)

708-10

朝食はプラス1000円でこちらで頂いたのですが、708-11

「鳴門金時づくしのフレンチトースト」や、

708-12

「高嶺の卵 すだちエッグベネディクト」などが選べ、本当に美味しかったです。
708-14

まだ夏休み初めだったこともあり、お客さまは多かったようですが気持ち良く滞在できました。ただチェックアウトはフロントが相当混雑するようですので、フレックスで早めにすませておくことをお薦めします。

お天気にも恵まれて、良い記念になった徳島旅行でした。

第707回 「涼歌、30歳になりました」

7月30日

長女、涼歌(すずか)が先日、30歳の誕生日を迎えました。

707-1b

以前から「Weekly N」をお読み下さっている方はご存じでしょうが、私の長女涼歌は生まれた時の医療ミスにより、脳性麻痺の障害を持っています。手足が不自由で知的障害もあり、養護学校を卒業した後 デイサービスに通所しています。

2003年から2008年までは、弊社のホームページで「気ままにDO!」を連載してくれました。涼歌が文章を考え、私がパソコンで打ち込む形式で65回綴りました。(現在はトップページのバックナンバーにあります。)車いすながら、彼女なりに穏やかに日々を過ごしていました。…24歳までは。

すべてがひっくり返ったのは、あの東日本大震災でした。震災1週間後、溢れる震災の映像で彼女は心の病にかかってしまったのです。あんなに人とのおしゃべりが好きだったのにコミュニケーションが通じなくなり、あんなによく笑っていたのに、表情が動かない。眠らない、食べない彼女に、家族も振り回され、どれだけ泣いたことでしょうか。

まったく食事をしないと衰弱するので、口を無理矢理でも開けて食べさせるのですが口を閉じて抵抗するので、毎日が戦争でした。夜中じゅう、大きな声で独り言を言うため私は夜眠れなくなり、昼は仕事ですから精神的に参ってしまいそうでした。

しかし、以前の身体障害を乗り越えた経験があるので、そのうち「泣いているだけでは何も変わらない。あるがままのこの子を受け入れなければいけない」と気がつきました。「過去と他人は変えられない。変えられるのは今、ここにいる自分と未来だけ」という交流分析の言葉に救われました。

「時薬(ときぐすり)」とはよく言ったもので、時間と共に薄紙をはがすように症状が少しずつ落ち着いて来ました。

24歳までは、デイサービスから送迎車で帰ってきた第一声は「お母さん、今日の晩ご飯は何?」でした。震災以降は意味の通じるやりとりが一切できなくなっていたのですが、数ヶ月後のある日、帰るなり久しぶりに「今日の晩ご飯は何?」と聞いてきたのです。涙が出るほどの嬉しさでした!日頃の何気ないコミュニケーションって、こんなにも貴重なものなのだと彼女に教えられました。

今は話が通じる時は半々くらいでしょうか。薬を使わなくても眠れるようになり、食事も好き嫌いがあるもののなんとか食べてくれるようになり、体重も戻りました。以前のように頭の中だけでコラムの文章を作れた能力は失われてしまいましたが、もう「生きてるだけで良いよね!」と主人と笑い合っています。

今、私はこの体験をリハビリテーションカレッジと准看護学院の授業の中で、お話しさせて頂いています。これから医療の現場に出る皆さんに、障害児育児のことや家族の思いを少しでも知ってもらえたら、という願いからです。

先日は、年に一度の家族旅行に徳島に出かけました。涼歌はホテルに泊まって美味しいものを食べるのが大好きなのです。介護者はヘロヘロになりますが。(笑)

707-2

ルネッサンスリゾートナルトのアクセシブル(バリアフリー)ルームです。次回、ここについては改めてリポートします。

大塚国際美術館を巡りながら、家族4人で静かな夏を楽しみました。まあ涼歌はレストランの方が楽しかったと思いますが。(笑)

707-4

今後も、穏やかな日々が続きますようにと「スクロヴェーニ礼拝堂」で祈ったのでした。

707-3

第700回 「バリアをバリューに~ユニバーサルマナー」

6月10日

このコラムも、皆さまのご支援の賜物で700回目を迎えました。いつもお読み下さいまして、ありがとうございます。

700-2

さて、「ユニバーサルマナー」という言葉をご存じでしょうか。

「自分とは違う誰かのことを思いやり、適切な理解のもと、行動すること」です。外出に不安を抱える高齢者や障害者、ベビーカー利用者など自分とは違う誰かの視点に立ち、接し方を身に付け行動することは、特別な知識ではなく「こころづかい」の一つだという考え方です。

「ハード(環境や設備)を変えることができなくても、私たち一人一人のハート(心)はすぐに変えられる!」

現在、ユニバーサルマナーを必要とする人は、高齢者が3300万人(人口の約26%)、障害者788万人(約6%)、3歳未満の子ども315万人(約2%)と言われています。

700-6

「今まで“バリア”として捉えていたことも、考え方や周りの人次第で、“強み”や“価値”に置き換えることができる」「車いすの私だからこそ、伝えられることがある。」大阪市のコンサルティング会社「ミライロ」の垣内社長の理念です。

「ミライロ」が提唱して「日本ユニバーサルマナー協会」が設立され、2013年にユニバーサルマナー検定を始めたそうです。協会の代表理事の垣内さんや「ミライロ」講師の方々はご自身も車いすでいらっしゃいますが、障害を価値に変える「バリアはバリューだ」という考え方は、希望になります。

ユニバーサルマナーの検定があると知ったのは最近で、早速ユニバーサルマナー検定3級を受講しました。ちなみに「バリアフリー」は「障害者や高齢者のバリアを取り除く」ということで、「ユニバーサルデザイン」は「国籍や性別、障害の有無にかかわらずすべての人に使いやすいモノやサービスのありかた」です。

私も二つの大学で、教員免許取得の際に必須である「介護等体験」の事前指導を8年ほど担当させて頂いています。実習で学生が初めて高齢者や障害児などと接する時にどうしたらいいのか、マナーとコミュニケーション法を伝えているのですが、その中でスタッフの中村にも「コミュニケーションでの配慮」をテーマに、体験を交えた話も担当してもらっています。

その中でよく訊かれる質問に「何か手助けをしたいのだが、具体的にどうしたらいいのかわからない」ということがあります。検定の中でも、これについてふれられていました。

700-8

たとえば障害のある方に手助けしようと思ったら、まずは「お手伝いできることはありますか?」と尋ねること。同じ車いすでも一人一人の状態は違うので、助けて欲しいこと・自分でできることは判断できません。この問いかけがあれば、「自分でやりたい」方の思いも尊重できるというわけです。

「ミライロ」では障害を価値に変えるバリアバリューの視点から、障害者やその家族、関わる企業や団体を支援することを目的として、2016年4月に「バリアバリュー財団」を設立しました。障害者の自立や社会参加の支援へつなげ、ネットワークを構築し、雇用創出へつなげたいということです。

この財団は早速、4月の「平成28年 熊本地震」で、被災地への福祉用品支援を行っています。避難所を中心にノーパンク車いす・白杖・筆談ボード・褥瘡(じょくそう)防止用クッションなどを送る活動を行っているとか。ノーパンク車いすはがれきの上を走行でき、比較的軽く、混雑する避難スペースで場所を取らないように背折れ収納ができるものにしたそうです。また、クッションは褥瘡を防ぐためには必需品ですが、意外と知られていないことでもあり、その細やかな心遣いには感銘を受けました。

熊本地震の障害者支援を目的とした寄付も呼びかけていたので、弊社もコラムの700回記念を兼ねてささやかな寄付もさせて頂き、日本ユニバーサルマナー協会にも入会しました。

協会の「30秒でわかる!災害時のユニバーサルマナー」は、ぜひ多くの方に読んでいただきたい内容です。

◆視覚障害のある方が避難所で困ることは

・掲示板の情報が読めない
・周囲の状況がわからず、不安 など

◆車いす利用者が避難所で困ることは

・移動のサポートが必要
・長時間同じ姿勢でいると危険 など

◆知的障害のある方が避難所で困ることは

・否定・注意がわからない
・パニックを起こしやすい など

◆聴覚障害のある方が避難所で困ることは

・館内放送が聞こえない
・周囲の状況がわからず、不安 など

700-7(写真は私の長女です。)

高齢者や障害者に、思いはあっても声をかけられない悔しさ…「どうすればいいかわからない」が、知識を得ることで少しでも解消していければ、そしてより良い社会になればと願っています。