第657回 「本物のスゴミ。」

8月9日                  (中村 覚)
今、高知県立歴史民俗資料館で「小さいもの見~つけた! 海洋堂のニッポン・ミニチュアカタログ」 が夏の企画展として9月6日まで開催中です。海洋堂と言えば、お菓子のおまけ(動物フィギュア)が大ヒットを記録して以来、すっかり有名になりました。

現在も小さな動物から版権を有するキャラクターのフィギュアまで幅広く手掛けています。 会場の2Fにはこれらの商品が展示されていますので、夏休みの子供たちの目を引くこと請け合いです。(写真はクリックすると大きくなります)

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そして1Fでは少し趣向を変えて、海洋堂所蔵のミニチュアの歴史とも言うべき珍しい物も展示しています。昔の人々の暮らしに密接した道具類のミニチュアや暮らしの風景のジオラマの数々。

本来、こういった物はエンターテイメントとは離れた存在だと思いますが、全くそんなことはありません!ちゃんとエンターテイメント、してます。今回の企画展のメインは、実はこっちなんですよ。(笑)それでは どうぞご覧下さい。

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まずはこちら。江戸時代以来の職人さんの道具類をセレクションしたものです。鑿(のみ)、鋸(のこぎり)、鉋(かんな)など様々な物が収められています。

驚くのは、同じ道具でも 微妙に形状の違う物も集めていることです。用途によって使い分けされていた技術のこだわりを垣間見ることができます。

そして これらのミニチュアが畳に飾り付けされていることにも驚きました。雰囲気が抜群なんです。

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続いて こちらは日本の小物類を集めたもの。 うちわ・和傘・下駄・足袋などなど。華やかさを感じます。

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ところで、これらのミニチュアは海洋堂の所蔵品ですが、海洋堂が引き継ぐ前は、映画俳優の今清水英一(いましみずえいいち)さんのコレクションでした。

今清水さんは大正13年生まれ。時代が変わっていく中、日本の古い文化が消えていくことに危機感を持ったことが、ミニチュアを集めるきっかけに。 既存の品を集めるだけではなく、わざわざ職人さんに頼んで作ってもらった物も多数。 できあがりが気に入らなければ何度でも作り直してもらう凝りようだったそうです。

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実物の素材を使っているため包丁の中にはサビたりしているものもありますが、だからこそ本物の持つスゴミが迫ってきます。

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50年もの歳月をかけてのコレクションです。一つ一つの「小物」と言うよりも「道具」の作り込みが、その年月を感じさせます。

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こちらは今回の企画展のパンフレットの表紙にもなっている能面のセレクション。2つの大きい面は右が山姥(やまんば)、左が小面(こおもて)、共に実物大です。私は今まで、女性の顔をしたこの小面のことを能面だと思っていました。違うんですよね、能面の種類の一つに小面があるんです。皆さん、ご存知でした?(笑)

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こちらは、纏(まとい)。 江戸時代の町火消(まちひけし)がそれぞれの組の目印として使用したもの。今清水さんが最初に収集したのがこの纏のミニチュアだそうです。

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これは、江戸の看板。当時 遠くからお店を見た際に、暖簾(のれん)だけでは何のお店か わかりにくい、と言うことで、立体物の看板を出すようになったそうです。形や絵柄で、何のお店か だいたい見当が付きます。

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こちらは急須・鉄瓶。 作品の質感に特に感じ入ったのは これが一番だったかもしれません。

江戸時代の屋台のジオラマもあります。

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今回、ご紹介したのは展示品のほんの一部分です。是非とも会場でゆっくりと、そして少しでも多くの方に見て頂きたいです。 物の存在感や存在価値、そして たどってきた歴史をエンターテイメントとして楽しんでもらえると思います。