第813回 「見所満載!宿毛の林邸」

8月18日

皆さん、宿毛市にある林邸をご存じでしょうか?高知県宿毛市に明治22年(1889年)に建てられ、林有造、譲治など3代続けて大臣を輩出した林家の大邸宅、「林邸」。

約630坪と高知県内でも類を見ない広大な住居建築物で、近代建築様式を取り込みながら独特の政治機能をも盛り込んでいる、全国でも貴重な木造建築物でした。

築後130年が経過し倒壊の危機に瀕していたところ、早稲田大学建築学科の研究室の協力やクラウドファンドを得て、新たな観光や住民の交流拠点「宿毛まちのえき林邸」として、今年4月にリニューアルオープンしたのです。

耐震改修や最低限の変更を加えながら、古材と歴史的価値を最大限活かし、地域振興の観光に役立つ再生を試みたのだそうです。

林邸の正面玄関は珍しい、神社を思わせる  丸みのあるむくり屋根。

この飾りは、宿毛湾の波を意匠化しているそうです。大きくしてご覧下さい。

1階は4室連続する座敷と、直角して付属する3室の客室が庭園に面しています。こちらの3室は20畳の続き部屋。

そして最大の特徴は4室連続し、開け放つと36畳の大広間です。
合計で56畳が庭を囲んでいました。
宿泊を含めた来訪者のため、規模に応じてふすまで仕切り、演説会や宴席など政治活動に使われたそうです。

宿毛は自由民権運動が盛んだった土地柄で、残されたおびただしい食器や火鉢などからは百名規模の来客が想像できるそうです。ホテル並みですね。(笑)

箱階段を上がって、2階へ行ってみましょう。

いかにも政治家の邸宅らしいと思ったのは、一見物入れにも見えるような小部屋。見張りを兼ねた書生部屋だそうです。明治の政治家は危険にさらされていた時代背景があり、ここから外玄関の来訪者を確認し、危機を察知したようです。

こちらも危機回避装置の一つ。
床の間の畳を外し、隙間から1階に降りることができます。

言わば「隠し階段」ですね。
公然の秘密だったようですが、使われた形跡はないとのこと。

こちらは、2階で最も贅沢な仕上げの「月見の間」。

当時は堤防が低かったため、右手の障子を開けると欄干の向こうに松田川が見え、川面に映る月を愛でながら酒宴を楽しめたそうです。

ちなみにここ、和室8室とキッチンが部屋ごとに1時間数百円でレンタル可能!
もしかしたら使用中だと、ご覧になれないかもしれませんね。この日は運良く、すべて見学できました。

さて、1階の一角には、新たに作られた光あふれる「林邸カフェ」が。
透明な強化ガラスの壁は、月見の間と同じ 組子細工耐力壁が使われ、開放感を活かした美しい耐震改修となっています。

円形キッチンを囲み、おしゃれな飲食&物販スペースが広がっています。
ちなみにこの日頼んだのは…

ポークビンダルーカレー、800円なり。美味しそうでしょ。
有機のスイーツや飲み物もありました♪

カフェ外側の犬走りには、かつての瓦が再利用されています。
なかなかオシャレです。

とにかく書き切れないほど魅力満載の、林邸。
ぜひ宿毛にいらしゃった時には足を運んでみてはいかがでしょうか?