第668回 「土佐弁シリーズ②」

10月24日                中村 覚

【タカデタマルカ ヤチガナイ】 こういった意味のわからない言葉も だいたい3回ぐらいくり返せば、ありがたく聞こえてくる気もします。(笑) 実はこれ、「本当にたまったものではない。ばかばかしい。」という意味の土佐弁です。大正生まれだった祖母もこれは言いませんでした。つまり、私は今まで聞いた事もなければ使った事もない代物です。

それでも今回紹介したかったのは、この言葉に「デ」や「ガ」の濁音が含まれ、勢いもあり、響きも面白く 「いかにも土佐弁!」と思ったからです。

本やネットで調べていると思わぬ発見(?)がありました。日頃からよく使っているために てっきり標準語だと思っていたものが、「これ 土佐弁なが?(土佐弁だったのか?) すっかり騙されちょった(騙されていた。) 」という具合です。

その代表格が【マケル】。
これは勝敗に負けるの意味ではなく「 液体が容器からこぼれる 」の意味です。

例えば、「コップの水がマケル。(こぼれる) 」「バケツの水がマケタ。(こぼれた) 」という具合に使います。

また この「マケル」に関連して 「マケマケイッパイ」 という言葉があります。

【マケマケイッパイ】 容器に液体がこぼれる程に入っている状態。

水やジュースなど液体が 表面張力、もう無理! と言わんばかりに入っている様は、見ているだけで気持ちが豊かになります。 ましてや それがお酒となれば。(笑)

土佐の先人達は杯にマケマケイッパイ注がれた酒を酌み交わし、なんちゃじゃない(たいしたことのない)ことにも議論を吹っかけ、どんちゃん騒ぎで盛り上がり、宵越しの金は持たぬと豪語する内に「♪~おらんくの池にゃ 潮吹く魚が泳ぎよる~♪」と歌い出したのでした。

IMG_1788
※土佐人のおおまかなイメージをデフォルメした表現ですので、事実とは異なります。

「おらんくの池にゃ 潮吹く魚が泳ぎよる 」
これは高知県民謡 「よさこい節」の歌詞の一部分です。意味は「私の家の池には潮を吹く魚が泳いでいます」。 池というのは太平洋のことで、潮吹く魚は鯨のことです。 太平洋は高知県民のものじゃないのに、好き勝手言ってゴメンナサイね、 酔ってるもんですから。(笑)

「マケマケイッパイ」 酒処の土佐だからこそ映える言葉ではないかと思うのですが、 ただの身贔屓でしょうか?(笑)

次は 【ドレバー、コレバー】【モービット】
「どれくらい? これぐらい」「もう少し・・・」の意味です。

IMG_1790

端的なのは やはり宴会、グラスにビールやお酒を注ぐ時です。注ぐ側が「ドレバー(どれくらい入れましょうか?)」、注がれる側は親指と人差し指を使って、「コレバー (これぐらい入れて)」と指し示します。お酒の好きな人は 注がれた後に、遠慮気味に もうちょっとだけ注いでほしい気持ちを相手に伝える時に「モービット(もう少しだけ)」と付け足します。 ちなみに「ピット」とも言います。

ビットは少しの意味。 既にお気付きの方もいらっしゃると思いますが、この「ビット」、実は英語にもあります。  bit =「少し」   a little bit =(量が) 少し。

結構、国際派!

【アイマチ】 思いがけず負傷すること。「あやまち(過失)」の訛ったもの。

以前、知り合いが怪我をして手術の必要もあり、2ヶ月程 入院しました。退院後、「今回は、いよいよ(本当に)、アイマチをした。」と言うわけです。私はアイマチという言葉を聞くのは初めてでしたが、話の前後から何となく意味はわかりました。 そして言葉の響きが良いなと思ったのです。単に怪我をした、手術をした、長い入院をした、という言い方だと、怪我による痛みや不便さを第一にした会話に聞こえます。(怪我をしたわけですから 当然のことです。)

ところが「アイマチをした」と言うと、怪我に始まり入院中の時間の過ごし方などから、色々と考えるところもあり、確かに怪我をしたことは良いことではなかったが、今回の一連のことは悪いことだけでもなかった、と含みがあるように聞こえました。この含みが良いなと! もちろん これは私の勝手な拡大解釈ですので、言った本人はそんなつもりはなかったのかもしれません。でも土佐弁の深みを感じました。