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ウィークリーN
第110回●2004年12月19日(日)

足跡9 「幸福のシミ」


ボトル
 ものごとは、考え方次第である。
例えば、ボトルに半分残っているお酒を見て「もう半分しかない」ととらえるか、「まだ半分残っている」と思うのか。
みなさんは、どちらだろうか?
 
 

 長女は3歳になり、夫はとある診療所にまた転勤になった。
その頃長女は、 座位保持椅子と言って車の付いた椅子に座らせて移動させていたのだが、ある日、私の不注意から、玄関で椅子ごとひっくり返り、土間で頭を打ってしまった。

 重症筋無力症の薬の副作用で皮膚がもろくなっている長女は、すぐ皮膚が切れる。この時も額がパッと切れ、ピンクのトレーナーには転々と血のシミが付いた。
(ど、どうしよう!?) 私はすっかり動転。電話した夫も動転。診療所のすぐ脇が官舎だったので、夫はあわてて駆け付けた。娘の額の傷を見て夫が「もし、この子に何かあったら許さない」と言い放ったことを鮮明に覚えている。ああ、夫婦は他人だけど親子は親子なんだと胸に突き刺さった一言だった。しかしそれも、父親としての深い愛情ゆえだ。何も言えなかった。

 首が長いこと座らなかった長女は、頭がぐらぐらと不安定だったため、トイレ介助の時などに額を打つことがあった。しかし、額が切れるなんて初めてだ。大丈夫なのだろうか?

 幸い(でもないが)、3針縫うケガですみ、頭も何ともなかった。(ああ、良かった…)と、本当にホッとした。血の付いたピンクのトレーナーのシミを漂白剤で落としながら、無事でいることのありがたさをしみじみと噛みしめた。

 数日後、きれいになったトレーナーを再び長女に着せた。ゲンが悪いかなあ、と思ったけれどお気に入りの可愛いトレーナーだったので、着せることにした。おやつの大学芋を食べさせている時、アメがポトッとトレーナーに落ち、シミを作った。私はハッとした。

(ああ)(これは、幸福のシミだ…)と思った。
ケガをして、トレーナーに血のシミが付いたことを思い出したら、
(おやつのシミなんて、ありがたいもんだ)と思えた。

 それまで、食べこぼしのシミなんて、洗濯の時手間がかかって嫌だったけれど、これからは違った感じが持てる気がした。

 

 

 
   
 
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