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ウィークリーN

第148回●2005年9月11日(日)

   「クレームを本当に宝物にしているか?」


 
  先日、プライベートである病院に行った。「患者中心の医療」をモットーにしているその病院は、広々としたロビーに大きな掲示板があり、患者さまからの意見や苦情が沢山張られていた。
 「患者さんからの苦情は宝物と考えています」と書かれた意見用紙。最近、様々な企業でよく見られる「苦情は宝物」というフレーズである。(患者の意見を大切にしてくれるのは良いことだなあ)と思いつつ、それらを眺める。

 しかし貼られた「苦情」とそれに対する「回答」を読む内に、(あれ?)(これって、どういう意味??)と、私の頭の中で疑問がしだいにふくらんでいった。例えば、次のようなものである。

問:ロビーの音楽の音が高い
答:音については今までも配慮してきました

これだけ、である。この回答は果たして、質問の意を汲んでいると言えるのだろうか?
申し訳ないが 研修の例題なら、明らかにバツの答えである。この回答には、患者さまが求めている「具体的な対応策」が何も書かれていない。また、対応策が取れない時には必須条件である「配慮」も、何ら感じられない。あるのは自分たちの見解だけである。

 「クレームは宝物」と言うなら、宝物らしい、丁重な扱いが必要不可欠なのではないだろうか?大変失礼ながら、一昔前の「お役所回答」みたいだなぁと感じた。

 私自身の診察も終わり、精算のために、カードを機械に入れる。ところが「受付できません。
○番窓口へ」と画面に出るだけ。理由もわからず機械に拒否されると、ムカッとする。
  窓口で「機械にカードを入れたんですが、受付できません、って拒否されたんです」と告げると、対応した職員は「ハイ。」と答えただけで精算に移る。ええ!?普通こういう場合、せめて「すみません」くらいは言うもんじゃないの?

 そして気づいた。ここにはどうやら「ホスピタリティー」が足りないのではと。相手に対する誠意、思いやり、もてなしの心である。病院にこれがないと、非常に冷たい医療になってしまう。私は病院研修においては、これを最初にお話しさせて頂いている。それほど重要なものだ。今回、直接対応して下さった医師や看護師の方々の対応レベルは非常に良かっただけに、病院の顔とも言うべきロビーでのことが、とても残念だった。

 そう言えば、以前こういう企業があったことを思い出した。お客様がクレーム(というより、改善希望)を丁寧に手紙に書いて下さったのだが、そこの社長はその手紙を現場社員に見せることもなく、内容も伝えず、握りつぶしてしまったのである。これでは、せっかくの「こう改善して欲しい」というお客様の思いはまったく無駄になってしまう。また、せっかく現場を改善するきっかけも潰してしまう。双方にとって、何もメリットはない。

 お客様や患者さまがクレームを言うのは、とても勇気がいる。しかし、勇気を出して改善して欲しいと言ったにも関わらず、その思いが届かなければまったく意味がない。「クレームは宝物」と謳っているのであれば期待感が大きいだけに尚更、その失望感や反発は強くなるのだが…。
  この言葉の持つ重要性と危うさを、改めて感じたのだった。

 

 

 
 
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