ウィークリーN
第15回●2003年2月16日(日) 「運転手さんの心のリレー」
 

一昨日のことだ。宿毛市内での仕事を午後3時過ぎに終え、駅まで送ってもらった。
次の宿毛駅発のJRの特急は5:40までなかったが、中村まで出れば中村発4:30頃の特急があるようだ。宿毛から中村まで、あいにく 普通列車もない時間帯だったが、バスなら30分ほどで行けるとのこと。幸い3:20発の宿毛発中村行きのバスに乗り込むことができた。「少し早く着きすぎるけど、まあいいや…」と思いながら。

ところがバスは市街地を抜ける宿毛大橋の手前に来ると、ピタッと動かなくなってしまった。思いがけない大渋滞である。舗装工事による片側交互通行により、なかなか動かない。5分、10分はまだ余裕だったが、15分たってもまだ工事区間にも行き着かないのにはいらいらし始めた。でも、40分も余裕はあるのだと、さほど心配はしていなかった。

やっと2kmもの渋滞を抜け出したときは、出発からすでに30分以上過ぎていた。本当なら、もう中村に着いている頃だ。しかし、バスはやっと快調に走り出したばかりだった。
「遅うなってすみませんねえ」と幡多弁で恐縮する運転手さんに「大丈夫です、中村を4時半の便に乗ればいいので」と答える。ほとんど人の乗り降りのない区間を、運転手さんは腕時計を気にしつつ、飛ばしてくれた。

しかし、意外と時間がかかる。「中村でも、工事やりようけんねえ」と心配顔の運転手さんだったが、懸念された箇所は運良く工事をしていなかった。ホッとしたのもつかの間、中村の市街地にかかると、とたんにまた渋滞。時間はもう15分もない。
有名な赤鉄橋まで来ると、なんと4:20になっている!あと10分だ!!
「うわー、間に合わんかもしれん…。」あせる運転手さん。

中村の有名な赤鉄橋

偶然、赤信号で止まっていた3台先にタクシーがいた。なんと信号の間に運転手さんはバスを飛び降り、タクシーの運転手さんに話をつけ、「あれに乗って行きなさい,でないと間に合わん!」なんという機転だろう。あわててお礼を言い、バス代1060円を渡し、タクシーに飛び乗った。

「JRは何時?」「4:30です」「ええー!?もう5分しかないやか!」とあせるタクシーの運転手さん。
「そりゃあ無理やわ、お金はいらんからもうバスにしたら?」「いや、遅れても構いません。せっかくのバスの運転手さんのご厚意ですので、駅までお願いします。」
やっと長い赤信号が青になった。時間は後5分を切っていた。

「奥さん、裏道通るけど、たぶんもう間に合わんよ」
「はい、いいです。無理をお願いしてすみませんねえ」
「後3分…、もう無理やわ。メーター倒してないけんね、どうせ帰り道やけん、駅まで連れてっちゃおけど。」
なんて親切な運転手さんだろう。かつてここに住んでもいたが、正直な話、中村でこんな運転手さんに出会えたのは初めてだ。
「あー、もう時間や。せめて後5分あれば…」嘆きつつ飛ばして駅前に出た。
「ちょっと待って、(列車)おるかもしれん!」「本当ですか!?」
「あ、お金はええけん!」まさか!そんなことをすると女がすたる!!私は千円札を放り出すとスーツケースをひっつかみ、ダッシュした。

「高知行きの特急出ましたか!?」「まだです。2番乗り場です」
こんな時に限って陸橋を渡らなきゃいけないとは!ヨタった足で全力疾走する。
…やった!間に合った!!乗り込めば、こっちのものだ。座席に倒れるように座りこんだ。
ラッキーなことに、特急は4:34発だったのだ。この4分に救われた。

ほっとして、あの二人の運転手さんの優しさを思い出した。なんてありがたいんだろう!なんだか、じんわり涙が出てきた。泣けてくるほどの親切にふれられたのは久しぶりだった。真の顧客感動とはを、教えていただいた気がした。

 
 
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