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ウィークリーN

第166回●2006年1月22日(日)

  「へき地医療を陰で支える医師の妻たち@」


 このところ、ライブドア事件とかアメリカ産牛肉の背骨混入問題など、気になるニュースが目白押しです。その中で、あまり注目されないけれど気になるニュースを見つけました。
 それは、病院の院長や開業を目指す医師に へき地や救急医療の現場で一定期間の実務を義務づける方針を厚生労働省が打ち出したというものです。過疎地や救急現場の医師不足を解消すると同時に、将来の地域医療の担い手に経験を積ませるのがねらいだそうです。

 確かに医療審議会などでも話題に上りますが、郡部やへき地では医師不足が深刻な問題です。少しでもその解消に役立てば意義があると思います。
  へき地診療といえば自治医科大学が有名で、医療の確保向上及び地域住民の福祉の増進を図るため、昭和47年に設立されました。地域医療に責任を持つ全国の都道府県が共同して設立した学校法人によって運営されています。大学は栃木県にあり、夫はここの6期生です。

 学生は医大卒業後、修得した医学知識と技術と使命感を持って出身都道府県に戻り、地域医療に従事します。在学中は大学に学費を貸与してもらいますが、通常は卒業後9年間、知事の指定する公立病院等に勤務すれば、その返還を免除されます。この期間、へき地の病院や診療所に勤務することで医師を確保するのです。この制度があったからこそ、郡部の農家に育った夫も、医師になることができました。

 自治医大の卒業生は卒業しても共に郡部の病院で働くこともあったりして、家族ぐるみのつきあいが多いのです。郡部の病院官舎で先輩の奥さん達ともご一緒させていただきましたが、いわゆる「お医者さんの奥さん」というイメージからは離れた、堅実で誠実な方々でした。子育てが大変な時期だったせいもあるでしょうが、化粧っ気もあまりなく、地元のスーパーに通い、地元にとけ込むためにはどうすればいいかと日々努力なさっていました。

 転勤族の夫を持つ妻は、うつ病になる割合が高い、と聞いたことがあります。あちこち転々とするわけですから、妻が仕事をするのはまず難しい。 また転勤により人間関係はそのたびごとにリセット。見知らぬ土地の気候風土や言葉の壁、地域からの疎外感・孤独感に悩まされたりします。特にへき地の診療所や病院では、医師の夫は土地では有名人で、こちらは存じ上げなくてもあちらは「○○先生の奥さん」とご存じだったりするので、家を出ると気が抜けないのです。

 最初に直面する問題は、地域の方々とのつきあい方です。高知というのは結構単刀直入にズバズバものを言うことが多いもので、特に県外からお嫁に来た奥さん方は戸惑うことが多いのです。また職住接近の、病院の隣が官舎などという場合、プライバシーがないことに驚くこともあります。 「先生、今日はお布団干してないねえ。いい天気だし、干したらえいのに」 なんてことは序の口。もちろん、好意で言って下さっているのですが、都会から来た奥さんにはちょっとしたカルチャーショックですよね。

 10年ほど前に聞いた、ウソのような本当の話。ある奥さんが雪の日、官舎を出て車で高知市に向かっていましたが、途中でスリップしたか何かで車をぶつけてしまい、動かなくなってしまいました。まだ携帯電話もない時代です。仕方がないので彼女は車をそこに置き去りにして、とぼとぼ歩いて官舎に帰りました。官舎に帰ると病院から夫が出てきて「大丈夫か?」と言う。「なんで?事故のこと、知ってるの?」と聞くと、奥さんが歩いて帰ってる途中、病院に行く地元の人たちに目撃されていたそうな。で、「奥さん、事故したみたいですよ」という情報がすでに複数入っていた、と。

 いやはや!恐るべし、地元の口コミ。
でも地元の方々は情も厚く、慣れたら本当に居心地が良く、「お礼奉公」の期間を過ぎてもその土地を愛し愛され、幸せな仕事をしている医師も沢山いらっしゃいます。
 その後ろで様々な苦労を乗り越え、医師を支えている妻達もいることを少しだけ知っていただければ、大変ありがたく思います。

 

 
 
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