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ウィークリーN

第186回●2006年6月11日(日)

 「メディア表現の恐さ〜誰が子供達を守るのか


 最近、とても危機感を感じたことがあった。たまたまケーブルテレビで放映されていた、最新のヒット曲50を紹介する番組の中でのこと。
 ある有名アーティストのプロモーション・ビデオがあまりにも過激で、ショックを受けてしまった。
 これはまるっきりアダルトビデオではないか!?と思われた。女性に妄想を抱き、監禁を思わせるシーン、ボカシは入っているが、あまりにも過激な性表現。その局は有料チャンネルではない。ケーブルテレビの一般チャンネルなのだ。それなのに1曲の間、延々とそういうシーンが続く。 これを職場で女性に見せたら、立派なセクハラだ。しかも これはプロモーション・ビデオなので、ランキングに入っている限り繰り返し流されるのだ。

 こんなものが一般のお茶の間に流れていいのか?それでなくても犯罪を誘発するようなビデオが多すぎるが、それらはパソコンやビデオショップで、一定の歯止めがあるはずだ。しかしこれは一般放送だ。もし子供達が目にしたら、どれだけのショックを受けることだろうか。女子小学生なら、男性不信になるのではないか?思わず、怒りすら覚えてしまった。

 高知県では、地域によって市町村でケーブルTVに入っている。だから、子供達も簡単に視聴できる。しかも最新ヒット曲を集めている番組は中高生にも関心が高く、楽しみに録画している子もいるはずだ。現に次女もその一人だった。その関係で、偶然目にしてしまったのだが…。ネットで調べてみると若者達の間でも、「エロすぎ」と評判になっているようだった。

 なぜこれが問題視されないのか、不思議でしょうがなかった。一刻も早く、放映をやめて欲しい。すぐにその局に電話したが、週末だったためつながらなかった。高知県教育委員会にも、休みだったが情報を入れておく。おりしも仕事の繁忙期と重なったが、週明けから、仕事の合間を縫ってあちこちに電話を入れた。子供達を守るために、何かしなくてはいられなかった。確か、番組審査機構みたいなものがあったはずだ。そう、BPO(放送倫理・番組向上機構)だ。ネットで調べて、電話をかける。

 ところがBPOは「うちは民放連なんです。ケーブルテレビは加盟してないので、どうしようもないですね」と言われてしまった。そこで直接、そのテレビ局に電話する。担当者は「うちはアーティストのみなさんからビデオをお預かりして流させてもらっているだけなので、どうしようもできません」と言う。

 聞いたところ、ケーブルTVには、BPOのような放送倫理の機構もないと言う。それはまずいのではないか?このままでは性表現もエスカレートする一方だ。現に、ここまで来ているのだから。「ナイフが出てきたり、血が流れたりしたら別ですが…」って、ある意味それ以上なのに。 健全な放送のガイドラインは、ケーブルTVにも必要では?

 ま、ここまでは想定の範囲内だ。次は文部科学省に電話してみる。ところが、子供達の健全な育成に責任があるはずの文部科学省は「表現の自由だから、それを官が表現統制はできません」と言う。そりゃそうだろうが、じゃあほっといていいのか。「何か方法はありませんか?」と聞くと「PTAを動かしていただくか、首相官邸にメールしてみては」という「お役所回答」。あのー、PTAを動かしてる間に、この曲のブームは終わっちゃんですけど。

 負けるもんか。次に、東京都の教育委員会に電話。治安対策本部とかいう部署に回してもらった。担当者の方は「調べてみましょう」と言ってくださり、調べた結果「有害情報という観点から、警察に連絡してみてはどうでしょう」とアドバイスをくれた。警察かぁ…。その前に首相官邸にメールを出してみよう。

 翌日、返事が返ってきたが、「ご意見等をお送りいただきましてありがとうございました。 いただきました国政へのご意見・ご要望は、今後の政策立案や執務上の参考とさせていただくとともに、関係する省庁へも送付させていただきます。」って…、さすがである。心のこもっていない、何の役にも立たない返答。はい、ここに頼ろうとした自分が間違いでした。

 ふとそこで、高知県教育長の大崎さんを思い出した。子供達を守るため、日夜頑張っていらっしゃる方である。そうだ、大崎さんだ!と、メールでお願いしてみた。
@ 一刻も早く、このビデオの放映を中止させたい。そのためにはどうしたらよいのか
A ケーブルTVの倫理基準をきちんと規制して欲しい (このままではエスカレートする)

 翌朝、お忙しいにもかかわらず、お返事を頂けた。
「メール拝見しました。心配ですね。」まず、この書き出しに心を打たれる。どういう対応ができるか、専門の担当者に検討してもらうように手配してくださったとのこと。具体的手段についても考えるので、少しお時間をください、と結んであった。
 感激した。どこも一様に、「それは確かにゆゆしき事態だ」とは認めたものの、具体的に自分の行動を示唆して下さったのは、大崎さんが初めてだったからである。

 今回のことで、日本のとても危うい現状がよくわかった。ケーブルテレビでは性善説に基づいて「多分大丈夫だろう」と危機管理を行っていない。問題を指摘されても教育行政の政府機関は、「うちには関係(責任)がない」「何もできない」と何もしない。よくメディアスクラム(集団的過激取材)については問題視され取り上げられるが、こういう「表現の自由」に関しては非常にややこしい問題なので、知らないふりをするのが一番なんだろう。

 でも「知ってしまった」以上、子供達の健全な生活を守るため、なんとかしなければと思う。そして、誰が(どこが)本当に子供達のことを考えてくれているのか、非常に良い勉強になった。
 
 アーティストのみなさんにお願いしたい。せめて歌の世界では、子供達に夢と希望を与えてあげてください。キワモノ狙いのこんなことで話題作りをするのは、悲しいとしか感じられないから。

 
 
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