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第211回●2006年12月3日(日 )

 「お菓子で文化を創る〜浜幸」


 先日、高知工科大学起業家コースの「地域産業振興論」のインタビューに出かけてきました。今回の訪問先はお菓子の「浜幸」さんです。「かんざし」が有名な、土佐銘菓の代表的企業です。場所は手結(てい)にあるリゾートホテル「海辺の果樹園」。浜幸さんが経営するホテルです。

 現在の浜田幸広社長は、昨年跡を継がれた3代目です。
「お菓子屋というのは 文化事業であり、文化を伝えていく・創るのが使命と思っています」と穏やかに語られていました。

 「高知だけで商売しても、先が見えている。より高知の役に立つためには、県外から仕事を取ってきて高知の農作物を加工し、雇用を創出することだ」と感じた先代の社長は、「商品力で競合に勝つしかない」と、おいしいゼリー作りに試行錯誤を重ねます。よりおいしくするには、香りが良い物を作るにはどうしたらいいのか?
 ただ果汁を固めても、香りが弱くなり味が薄くなるため、それを補うために普通は香料を入れるのだそうです。しかし香料を入れずに、果物の香りを出せないものか?
 
 その答えが海洋深層水でした。6年前、高知大学との共同研究で、 果物の皮の香りを抽出する時、普通だとえぐみが残るのに、香りだけうまく取り出せるようになったのです。これでガラッと商品も代わり、売り上げも伸びて行ったとか。
(プロジェクトXなら、ここがクライマックスになるところです!)
 このゼリーは「土佐の日曜市」としてヒットしました。日本航空が全国で選び抜いた70社の中で2位にランクし、国内全路線スーパーシート茶菓子に採用され、また2001年のジェノバサミット政府専用機の機内食デザートにも採用されたそうです。これはすべてお願いした訳でなく、推薦によって決まったのだとか。

 また浜幸の品質の高さを証明するのは、全国の同業者にOEMの商品を提供していることでしょう。OEMというのは、相手先のブランドで販売される製品を製造することです。つまり浜幸のお菓子が、北海道から九州までの全国のお菓子屋さんで売られているそうなのです。

 この山の上のホテルは、13年前に「環境のいい所でお菓子作りをやりたい」と経営を譲り受けたのですが、高知の良さを知って欲しいという思いは、お菓子作りと同じだそうです。ここの自家農園では10種類の果樹を栽培し、ホテルのデザートや工場でも使っているとか。お菓子に使う果物は主に、契約農家や農協から仕入れているそうです。

「菓子屋は文化事業だと思います。 これからの菓子屋のあるべき姿として、その地域のお客様に対しての、文化の発信基地でないといけないと思っています。最近は親戚などで集まる機会が少なくなりましたが、ケーキがあることによって家族が集まる機会が増やせるんじゃないでしょうか。そういう媒介としてお菓子を役立てていきたいのです」とおっしゃる社長の言葉に、大きくうなずきました。
 ちなみに本店の建物は40年以上経つのですが、設計してもらったのは倉敷のアイビースクエア(大原美術館分館)を設計した浦辺さんという方です。浜幸の初代社長はとにかく美しいものがお好きで、大原美術館を見てその美しさに感動し、「この人にやってもらう!」と決め、思いを通されたとか。そう言えばここの4階では絵の展覧会など、文化的な催しがしばしば行われています。
 工場見学の後、おいしいケーキを頂きながら参加者で今回の振り返りを行いました。
 果物で一番多く使うのがオレンジ(年間40トン)だそうですが、高知では採れなくなった『フクハラオレンジ』という品種なので、すべて県外から仕入れているそうです。数年前から生産農家が高知には無くなってしまったと聴き、せっかくニーズがあるのに…と残念に思ったことでした。
 しかし、「お菓子が文化を創る」「これからも高知を応援していきたい」という社長の気概には心を動かされました。 今度県外の方にお土産を持っていくときには、必ず浜幸のお菓子を持って行きます!

浜幸ホームページ

 

 
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