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第255回●2007年10月14日(日)

   「苦い自立〜自立支援法アンケートより」

 
 もし、あなたが給与の3分の1を「会社運営のために必要だから」と徴収されたら、
どう思うだろうか?「ふざけるな。こんな会社、働けるか!」と思うことだろう。
 ところが、働ける会社がすべてそうだったら?
「そんなバカな。行政に訴える!」と思うだろう。

… しかし、行政がそれを後押ししていたとしたら?
 「そんなこと、ありえない」 「働きに来ているのに、お金を取られるのはおかしい」と思うだろう。
しかし、それが日本の現実問題として、存在するのだ。それが「障害者自立支援法」である。

 13日、高知女子大学の田中きよむ先生が高知県内で障害者を対象に行ったアンケートの結果を発表なさった。高知県内で1500人からの答えが集まった。障害発生率は5%ということなので、人口80万人の高知県の障害者は4万人。うち1500人の回答が集まったのだから、これは全国的にも高い数値であろう。

 障害者自立支援法によって大きく変わったことの1つに、「国が財政難だから、障害者自身も施設利用料を負担しろ」ということがある。この結果、どうなったのか?

 作業所に勤め、月3万円の賃金があった障害者Aさんは、作業所の運営費の補助金が本人の1割負担になり、月1万円払わなければいけなくなった。食事も実費のため、1万円かかる。結果、給与3万円の内2万円が徴収され、1万円しか手元に残らない。驚いたことに、このケースはまだマシな方なのだ。

 高知県では、アンケートに答えた中、月5千円未満の賃金の障害者は3割。8割は、2万円未満だった。これでは利用料と食費を払うと、マイナスになってしまう。(全国平均の作業所給与は1万5千円。)
「これでは厳しすぎる。経済的暴力だ」
「朝9時から夕方4時まで作業をし、工賃よりもサービスの利用料が高いというのは何をしているのか」
という悲痛な声が上がっていた。

 中には、こう聞かれた施設職員もいる。「職員さんも働いているが、お金を払っているのですか?」
この問いに答える職員は、どんな思いだっただろうか。
 働くことは、生き甲斐にもなり、自立することへのプライドにもなる。ところが障害者が作業所で働くことは、今や
「働かせてもらっている」という負い目、コンプレックスになってしまっているのだ。

 作業所に行くと、昔は細々とでもお金を稼げた。ところが今は逆に、お金がないと働けない。このため貯金を取り崩したり、作業所を辞めた人もいる。辞めた結果は、自宅にこもり、家族以外とのふれ合いもない。
「私が生きている内はいいけれど…」と語る親の横で「親が死んだら僕も死ぬ」と言う30代半ばの男性。

 アンケート中、保護者の年齢は 3割が70代以上だった。父親が死亡している人が半数、母親が死亡しているのは3割。現保護者が体調を崩したり、無くなった場合には?という問いには、「施設入所」という家族の回答が62%。本人がそう回答したのは44%だった。これが「豊かな国・日本」のもう一つの顔である。

 障害者施設も、今や存続の危機に立っている。障害者が来た日だけ、日割り計算で補助金が支払われるから、利用者が体調が悪くて休むと、施設への補助金が減るのだ。障害者自立支援法が施行されて、前年比500万円までの減少になった事業所が半分、もう半分は500万円以上の減収だ。これでは経営の安定はとうてい望めないし、人材確保も難しくなる一方だ。

 「個人の努力ではどうにもできないものを社会が負担する」のが社会保障だったはずだ。この国は、次第に社会保障が崩れ、何でも自己責任へとシフトしていくのか。誰でも、明日は障害者になるかもしれないのに。他人事ではないのだ。

 障害者自立支援法は、砂上の楼閣だ。現にもう、足下から崩れつつある。
障害者にも明るい将来を持たせて欲しいと 親として、切に願う。

 
 
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