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第635回●2015年3月8日(日)

 「ある邂逅 (かいこう)

 香美市香北町に「ラフディップ」というフォトスタジオがあります。
実はここに、山の上の本屋として知られる「うずまき舎」さんが、2月下旬まで
間借りしていたので、先月、ちょっと立ち寄ってみました。

 以前から「どんな本屋さんなんだろう?」と興味・関心を持っていたのですが、
工事のためうずまき舎さんが山の麓の国道沿いで冬期営業をなさっていたのは、
山道を歩くのが苦手な私にとってラッキー以外の何物でもありませんでした。

 この店内の雰囲気がなんとも言えず落ち着いてて、それでいて心がはなやぐ感じで
すご〜く良かったんです!お店の一隅にはカフェもあり、ゆったりと落ち着いて
本を味わえました。

 店主の村上さんが選ばれた新書と古書が、居心地の良いオーラを放っていて、
本好きだった学生の頃に戻った気分でした。

 ウキウキして、あれこれと本を吟味している中で・・・

 ふと、「1冊の宝物」というポップのある本に目がとまりました。昭和のテイストの表紙絵。そこは古書のコーナーだったのですが、飾られていたのは…

「亜愛一郎の狼狽」(あ あいいちろうのろうばい)。目を疑いました。
ウン十年前私が夢中になった直木賞作家、泡坂妻夫(あわさかつまお)さんの本でした。

 私は文庫版しか持っていませんでしたが、これは幻影城ノベルスの昭和53年(1978年)発行の初版本でした。3000円で、買うことを即決!

 まるで高校生の頃に好きだった人と思いがけない場所で突然再会したかのような高揚感を覚え、中村に
泡坂妻夫氏がどんなに素晴らしい作家だったか、熱を入れて語っていました。紋章上絵師やマジシャンの顔を持ち、周到なトリックをマジックのように仕掛けてあり、そのエンターテイメント性と品格が両立した極上の推理小説は、まさに「職人技」です。代表作は日本推理作家協会賞を受賞した「乱れからくり」

 「そんな馬鹿な!」と思わず叫びたくなるマジシャンならではの仕掛けの数々もありました。
たとえば昨年復刊され話題になった「生者と死者」という作品は、最初に袋とじの状態で短編小説を読み、各ページを切り開くと長編ミステリーが現れて、それまでの短編は長編の中に埋もれて消えてしまうという前代未聞の仕掛け本です。中身はもちろん一級品ですが、今の時代に紙の新品で買わないと意味がない本というのもスゴイ。

 「亜愛一郎」は名探偵です。変わった名前ですが、探偵名鑑を作る時に、真っ先に名前が挙がるように作者が「あ」で始まる名前にこだわった、というエピソードを覚えています。

 店主の村上さん曰く、「これはここのスタジオのオーナーさんの本なんですよ」とのこと。
また偶然ちょうどその時にオーナーさんが戻ってこられ、ひとしきり泡坂妻夫談義に。素晴らしい作家なのに意外に知られていない泡坂氏のファンにお目にかかったのは、お互い「初めてですね」ということで盛り上がりました。

 売り物ではないオーナーさんの愛蔵本も拝見しました。
どれも
幻影城ノベルス中でも大好きだった「乱れからくり」がうらやましくて、
帰宅すると早速アマゾンで探して、後日手に入れたのでした。(笑)
 それがこちら、昭和52年の初版本です。古い本なので変色していますが、手に入れてから驚いたのがサイン本だったことと、著者が本作で日本推理作家協会賞を受賞した新聞記事の切り抜きが裏表紙に貼り付けてあったことでした。きっと泡坂さんと親交のあった方か、熱心なファンの本だったのでしょう。


 ちなみに「乱れからくり」は松田優作主演で過去に映画化もされましたが、素晴らしい原作とはまったく別物の作品になっていて、非常に落胆した記憶があります。

 泡坂さんは本当に残念なことに2009年に鬼籍に入られてしまいました。あまり多作ではなく時代小説もお書きでしたが、私は推理小説ファンで、昨夜も過去の著作を購入しました。


 現在、書棚の「泡坂妻夫コーナー」は厳選した31冊。佐野洋コーナーの100冊には負けますが、私にとっては老後の楽しみとして、もう一度読み返したい大切なコレクションです。
 
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