第771回 「ご縁の白米」

10月25日

今週は明日から東京出張なもので、少し早いコラムのアップとなります。

さて、少し前の話です。高知県東部の田野町という所を通っていると、稲刈りの風景が目に映りました。車を降り、撮影許可を頂いて写真を撮りました。

小さなコンバインでの刈り取りは、もうあまり見られなくなった光景です。
しばらく撮っていると おじさんが「もう、えいかね?」と少し照れたように笑顔を見せてくださいました。

「これはもち米だけど、あんたらぁお米はスーパーで買いゆう?」
「はい、そうです」
「お米は本当は機械乾燥じゃなく、こんな風に直干ししたものが美味しいよ」
「うらやましい。それはさぞかし、美味しいでしょうねえ~」
と答えてから ふと思いついて、

「おじさん、このお米って少し売って頂けないですか?」
すると、おじさん「お米はまず試しに食べてみないと、
人によって味は違うのでわからないから。
少し分けてあげるから、おいしかったら、食べてみて。」(笑)

少しと言っても、一升(10合、約1.5kg)くらい分けてくださり、
「僕はみんなに、試しに食べてみてって言う。
それで美味しかったら買ってくれって言いゆうき。」
なんて気概がある方なんでしょう!

当然のようにお米は甘みがあって美味しく、10日ほど後で買いに行くことに。
玄米なら安いと言うことでしたが、精米の手間を考えると白米でお願いすることにしました。うちと中村と次女が5キロずつで、15キロです。いつもスーパーで買っているお米よりも数百円安いのは、重ねてラッキーです。

このお米、真っ白いヌカで覆われています。おじさんが研ぎ方について
「まず3回普通に研いで、4回目は水だけ替える。5回目で炊いて。
ヌカはわざと多めに残してあるんだけど、その方が甘みが出るから。」
ヌカが残ってると甘みが出るなんて、初めて知りました。

そして炊いたお米。そうそう、このほのかな甘みと少しもちもちした食感。
「美味し~い!」の一言です。家族も喜んでくれました。

ご縁があって、うちに来てくれた白米。
安全・安心で、美しい山の風景の中、生まれたお米。
笑顔のおじさんを思い出すと、なんだかよけいに美味しく感じてしまうのでした。これから定期的に出かけて、おじさんのお米を買おうと思います。

食欲の秋、白米の秋です♪

第770回 「生活必需品だからこそ」

10月20日             中村 覚

タバコやアルコールをこよなく愛する人々、しかし興味のない人からすれば、 ただの無駄遣い。でも嗜好品ですから 当の本人が良ければそれで良し! なるべく買わずに少しでも控えるなどは、どこ吹く風。

ところが、これが生活必需品となると話は別です。例えば、買ったばかりの歯ブラシが2週間で傷んでしまった。仕方ないので新品を購入。今日からはまた新しい歯ブラシになって気分は爽快! とはならないと思います。新しいことは喜ばしいはずなのに、もったいないという気持ちの方に軍配が上がるのでは。

タバコやアルコールよりも よっぽど生活に役立つはずの歯ブラシなのに…。勝手なものです。人は勝手です。私も勝手です。

実は数年前から、「もったいないなぁ」と思う事があって、それは松葉杖の先のゴムです。2~3カ月使っているとゴムが劣化し、(地面との摩擦で擦り減り)簡単に穴が開いてしまいます。こうなると使い物にならず、新しいゴムに交換です。ゴムは1個400円~500円程度ですが、左右の劣化の速度は ほぼ同じなので1回の交換で1000円弱かかります。

「まぁ でも それは仕方のないことじゃないの。」と第三者には見えるかもしれません。しかし私が松葉杖を使い始めた頃のゴムはもっと丈夫で、一年に一回程度の交換で事足りていたように記憶しています。何でもそうですが、昔の品の方が丈夫でしっかり作ってあり 品質も良かったのでしょうか。

ついつい その丈夫だった頃のゴムを基準に考えてしまうので、最近のすぐにダメになるゴムを交換するたびに「何かが違う」と思っていました。 早い話がもったいなさ過ぎるんです。(笑)

そこで1年程前から使っているのが、この靴の補修剤です。本来はつま先のはがれた部分や靴底の滑り止めに使用しますが、靴底も松葉杖のゴム底もほぼ同じだろうと試してみました。

これが意外にイケます。ゴム底に塗ることで、補修剤が地面との摩擦を防ぎ、穴が開きません。塗り固めた補修剤自体は2~3ヶ月で摩耗してくるので、また新たに塗り直します。それを繰り返すことで、同じゴムを使用できます。この靴の補修剤を購入するのに1500円ぐらいかかりますが、私は約1年間、使えました。つまり年間に1500円しかコストがかかりません。

雨天時のスーパーなど、店内のツルツルした滑りやすい床との相性も試してみましたが、(自分が体験した範囲内では)大丈夫でした。元々 新品のゴム先でも雨天時の滑りやすい床は注意が必要ですから、補修剤で塗り固めたゴム先も 注意が必要なことに変わりはありません。

この補修剤、使用方法も簡単です。

まずは、ゴム底に無造作に塗ります。

次に付属のヘラで平らに伸ばしていきます。厚みを増し過ぎると乾いて固まるのに時間がかかります。そして 内部は固まらず外側だけが固まり、使っているとすぐにダメになり、塗り直しが必要になるので 厚みは数ミリくらいに。

このように均一に塗ったものを約12時間、風通しの良い場所に置いておけば出来上がりです。私は夜 21時頃に作って、翌朝の9時頃から使います。

新品を買っても、大してうれしくない生活必需品などは、これくらいがちょうどです。(笑)

第769回 「さようなら、ウトコ…逆転、存続!」

「さようなら、ウトコ 後編」として昨日14日に投稿したのですが、一転本日15日、高知新聞に「室戸【ウトコ】存続決定」の記事が!なんてドラマティックな展開なんでしょう!この情報は最後に詳しくお伝えします。

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10月14日

惜しくも11月1日で営業を終了する、室戸が世界に誇るホテル「ウトコ オーベルジュ&スパ」。貴重な最後のステイを楽しんだ、2日目のお話です。

ウトコの醍醐味は、目覚めの瞬間から朝の海を存分に楽しめることにあります。

ウトコでの朝は、東向きの壁一杯のカーテンを全開にしておき、朝日が海から出る光景を眺めることから始まります。この日は5時45分に、窓を染める景色の美しさに「うわあっ!」と声を上げて飛び起きました。この写真はベッドからの眺めそのものです。なんてきれい!!

まるで小学生が夏休みに、海辺での生活を初体験した時の感動が再現されたよう。朝の空は刻一刻とその姿を変え、私はカメラを手に、たっぷり30分以上、夢中でシャッターを押し続けていました。

ほんの一瞬だけ、ダルマ朝日が見えました。ラッキー!!
うまく撮れませんでしたが、今日もいいことありそうです♪

オーシャンビューのバス。なんて贅沢な眺めなんでしょうか。残念ながら朝からやりたいことが多すぎて、お風呂に入る時間はありませんでした。

タイフーンテラスから見た、朝の太平洋。徐々に明けゆく朝の海の美しさを、目に焼き付けておきました。

今回初めて体験した、朝6時半からの「空海テラピー」。
ヨガを20分ほど体験しました。体がシャキッと目覚める感じで、このマットがすべて埋まる盛況ぶりでした。

この鯨のオーナメントは初めてでしたが、ウトコの風景にとてもよく溶け込んでいました。

さて、レストラン「ボンヌ・ペッシェ」で朝食です。平日のためか、ほとんどのお客さまが女性でした。

かつて、「ウトコディープシー&テラピー」だった頃、朝のビュッフェの豪華さは忘れられないものでした。ウイークリーN第267回に、その時の感動を書いています。(バックナンバーはこちら。1月5日分です。)星野リゾートになってビュッフェではなくなりましたが、食事内容はより工夫され、洗練されているように思います。

昨夜の鰹づくしに対して、朝は柚子づくし。

日の出のグラデーションをイメージした3種のジュース。左から、柚子のシロップと海洋深層水のジュース、フルーツジュース、キャロットジュースです。以前からこちらのジュースは感動ものでしたから、最後にまた味わえて良かった!
左は柚子のコンポートと季節のフルーツのヨーグルト。奥のサラダは…

柚子ドレッシングの上に最後に柚子の皮をすり下ろす演出が心憎い。柚子の良い香りがふわっと立ち、食欲をそそります。これは実生(みしょう)柚子という接ぎ木をせず種から育てた柚子で、実を結ぶまでに18年かかるそうです。普通の柚子よりも味が濃く、薫り高いものです。

朝食の内容を、柚子をかたどったリーフレットにイラスト入りで説明してありました。こういう心配りがまた嬉しいものです。

柚子皮を練り込んだ焼きたてワッフルと、エビやホタテのシーフードソーセージとオムレツを柚子胡椒ソースで。もちろん、本当に美味しかったですし、余すところなく地元のこだわり食材を使い切る愛情には拍手を送りたい気分でした。同時に、ウトコと地元産業のつながりと影響の大きさを感じずにはいられませんでした。

こうして、ウトコでの最後のステイは幕を閉じました。
シュウ・ウエムラ氏の「ウ」、室戸の「ト」、高知の「コ」から名前を取ったホテル。本当に素晴らしい室戸の海を楽しませる最上級ホテルの幕が下ろされるのは返す返すも残念です。今後のホテルの経営について室戸市の小松市長は、「芸能人も利用するなど人気があったので残念だ。ホテルとして継続できるよう関係者と協議し、できるだけの支援をしたい」とおっしゃっています。

ウトコの大ファンとして、今までこのホテルに関わって下さったすべての方々に「今まで本当にありがとうございました。」とお伝えしたい気持ちで一杯です。
そして心から、復活してくれる日を願いつつ…。

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10月15日

冒頭で触れたとおり、ウトコの存続が決定しました。土佐清水市のホテル「足摺テルメ」の指定管理者である兵庫県の「アクトリゾート」が引き継ぐことが高知新聞で報じられました。バンザイ!!

「アクトリゾート」の社長は、高知ファイティングドッグスのオーナーでもあるそうです。足摺テルメも赤字でしたが、2016年11月期に黒字転換し経営が軌道に乗ったため、新たな事業展開を模索していたそうです。2年間の運営委託契約を締結し、ホテルの建物を含めたウトコ社のM&A(合併・買収)に向け、交渉中だとか。

11月1日に閉館し、12月15日にも再オープンする予定だそうです。星野側から8人の社員を引き継ぎ、新規雇用も10人ほど見込んでいるとか。当初の施設コンセプトである「美と健康」と共に、地元食材などを重視し、高級路線を維持する方針ということで胸をなで下ろしました。

思うに、高級路線を維持するのは地の利が悪い高知県室戸市において、どれだけ大変なことだったでしょう。「海に住む」というコンセプトを打ち出し、2007年には「世界のホテル100選」にも選ばれたウトコ。(ウイークリーN 第265回)確かにオープン当初から言うと、カットされたサービスもありますが、最高級のホスピタリティーを提供するという理念と現状は脈々と続いています。

弘法大師は室戸の空と海に感銘を受けて「空海」と名乗ったと言われています。この朝日のパワーを体感できる、「ウトコ・ステイ」をまた皆さまに味わって頂けると思うと、嬉しくてたまりません。「アクトリゾート」さん、ありがとうございます!

私のフェイスブックを見て、「死ぬまでに行ってみたい所Best 10入りのウトコ」と書いてくれた友人がいるのですが、閉館を残念がり「もしも復活したら、一緒に泊まろう!」と約束していました。(笑)彼女との約束、果たせそうです。