第918回 「前に進む小さな勇気」

8月30日

本当なら東京オリンピックで賑わっていたはずの年。コロナ禍で生活、経済を始め社会は大きく変化しました。そして、安倍首相の突然の辞意。まさに、大変革の年になっていると感じます。

翻って、日々の暮らしの中で毎日行くスーパーマーケット。変化の規模は小さいですが、ここ数ヶ月でセルフレジが台頭してきたり、レジ袋が有料になったりと変わって来ていますね。スーパーのカードも支払い機能のあるプリペイド式になるなど、キャッシュレス化が進んでいます。急な変化について行きにくい高齢者ですが、実は高齢者こそ、こうしたカード払いを使うと小銭の出し入れがなくなるのでとても便利なのにと思います。

でも多分「私には無理!」という思いこみがあり、現金払い以外には二の足を踏んでいる方も少なくないのでしょう。レジで支払いに時間がかかっている高齢者の方を見ると、「少しだけ勇気を持って前に進めば、世界が変わって楽になるのにな」と思うことがあります。私の85歳の母も3つのスーパーでプリペイドカードを使い分けていますが、高齢でもセルフレジやカード類をささっと使いこなす方を見かけると、「カッコイイ!私も変わって行く勇気を持たなければ」と触発されます。

実は私も、人のことは言えないんです。政府が新型コロナ対策として打ち出した事業者への「持続化給付金」は申請が難しそうと、最初からあきらめていました。

しかし昨夜、高知工科大学大学院の同窓の友人から「やってみて!そんなに難しくないし、期限は9月末までだよ」と勧められたのを期に、重い腰を上げることにしました。(笑)

「持続化給付金」で検索し、中小企業庁のホームページを見つけ、個人事業者用の申請方法を読み、必要書類について学びます。2019年の確定申告書類、対象月の売り上げ台帳、通帳のコピー、本人確認書類…。まずは登録し、マイページを作成し、申請情報を入力。とは言っても数字に弱い体質なので(笑)、必要書類を1つ1つ確認し写真を撮り、事業の業種分類に頭を悩ませ…とやっていると、次女から連絡が。

乳腺炎になってしまい、熱が出て病院で診てもらうとかで、手続きは急遽中止に。まあ、そんなもんです。途中まででも画面を保存できることを確かめて、パソコンを切りました。まぁ要領も悪いので、時間をかけて少しずつ進めていくようにしようっと。

今日はとりあえず、前に進む小さな勇気を出せて半歩進めたことに満足です。(笑)

第917回 「頑張れ あじさい園」

8月22日          中村 覚

新型コロナによる感染者への誹謗中傷が問題となっている昨今、地元の高知では心温まる対応が全国ネットのニュースでも取り上げられました。クラスターが発生した高知市にある知的障害者支援施設「あじさい園」に「頑張れ あじさい園」と書かれたのぼり旗が、心ある方によって立てられたのです。

「地元ということもあり、この旗をぜひコラムでも紹介させてもらえないかな?」と代表の筒井から話があり、言われるとその通りと思い「はい!」と返事をしました。でも「ただ写真を撮らせてもらうのは傍観者みたいだからね」ということで筒井から寸志を渡され、それを持って私が園に伺うことになりました。

もちろん ただの興味本位ではありません。皆さんの温かい気持ちが広がるきっかけに少しでもなれば。だからこそコラムで紹介させてもらいたい、その一心です。

ありがたいことに、本館の脇にある建物の近くで携帯電話をしている男性をお見かけしました。ちょうどその時、タイミングよくお電話が終わったようで、しかも目が合ったので「おはようございます。」とあいさつをすると、こっちに歩いて来てくださるので、良かったと思いました。

ところが少し緊張してしまって「あのぉ、大変な時期と思います。これを役立ててもらいたいですが~。」と寸志をおずおずと差し出しました。

すると1~2秒、何も言わず こちらをじっと見る男性。その後、とても心のこもったお礼の言葉をおっしゃったので、私も照れ臭くなりました。 そのあと自己紹介をしてくださり、理事長の南さんとわかりました。こちらの説明もしなければと思い「僕は社員で、代表と話をして~」とこちらに伺うまでの経緯をお話ししました。

そして、今回のコロナの話題になり「ありがたいことに、園にかかってくる電話もほとんど応援です」というようなことを話してくださいました。
その後、のぼり旗の写真を撮らせてもらうことに。すると南さんが旗の説明をしてくださいました。

旗は門の両脇に1本ずつ設置されています。
建物を正面にして左側に立っている旗は、園に入ってくる方が読める向きに。

右側の旗は、帰られる方が読める向きに設置されているとのことでした。

ご説明頂かなければ、知らずにただ撮っていたと思います。

風で旗がよくなびいており、それを見ると気持ちがグッと引き上げられ、高知の風土も後押ししてくれている印象を受けました。

写真を撮りおえて、再び南さんの所へ。
今月の18日 午前6時過ぎに出勤してきた職員の方が、設置された旗を目にしたそうです。そして次の日、玄関に同じ旗を立てようとしていた60歳前後の男性を職員の方が発見。連絡先などをお聞きしたそうですが、「かまん、かまん」とそのまま立ち去ったということです。

「それでは失礼致します」と挨拶して車に乗り込むと、最後まで見送ってくださいました。たいへんな時期に急に伺ったにも関わらず、丁寧に接して下さった南理事長のお気持ちが嬉しくて、車内で1人温かい気持ちになり、代表の筒井に早速電話しました。

小石を湖にチャポンと投げ入れると水面に波紋ができます。どんな小石でも水面に現われる波紋は弧を描くように徐々に大きく広がっていくものです。波紋のように人の優しい気持ち、温かな心もゆっくりと広がっていってほしいと思います。

第916回 「ようこそ、赤ちゃん」

8月16日

今週 我が家に、初孫となる次女の赤ちゃんがやって来ました。

初め 里帰りの予定はなかったのですが、急遽帰ることになりました。私は長女が出産時のトラブルで障害児になってしまったため、「とにかく母子ともに元気で生まれて欲しい!」というのが一番の願いでした。ありがたいことに、二人とも元気に退院してくれて安堵しました。

コロナ禍での出産で、病院もお見舞い禁止になっていました。次女に付き添った婿も、出産後2時間しかいられなかったそうです。もちろん私たち親族も退院するまで会えませんでしたが、「忙しい入院スケジュールを自分のペースで過ごせたことは返って良かったね」と言うと、次女も「そうやね」と同意していました。

およそ30年ぶりの赤ちゃんのお世話です。わが家ではご存じの通り、「老障介護」(高齢の親が障がいのある子どもの介護をし続けること)の状況です。育児と介護を続けて34年、仕事が加わって23年なので、言わばベテラン(のはず・笑)。お世話の要領は基本同じなので、わりとすんなり育児サポートができました。

それにしても昔ながらの里帰りというシステムは、つくづくよくできているなと思います。授乳、おむつ替え、お風呂、赤ちゃんのタオルなど3~4倍になる洗濯物、食事や洗い物、掃除、環境を整えるなど、やることは山のようにあるわけです。育児に言わばチームであたれば、お母さんは授乳などにより集中できるわけですもんね。

これを経験すると、現在よく言われている「ワンオペ育児」=子育てと家事(+仕事も)のすべてを1人でこなさなければならない状況が、いかに大変なことかわかります。まして上にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいる場合には…。

私も朝 寝不足の次女を少しだけベッドに行かせ、長女のデイサービスの連絡帳を横目で見ながら赤ちゃんをあやし、その日の仕事の優先順位をつけた時、ほんの少しわかった気がしました。すべてのワンオペ育児をなさるママ(パパ)に、敬意を表します。

子育てツールの変化も驚きです。上のラッコのエアーバスタブもびっくりでしたが、授乳の時に次女が携帯を手にしているので注意しようとしたら、授乳タイマーでした。なんでも「ぴよログ」という育児記録アプリだそうで、おしっこや授乳、寝た時間など両親でデータ共有ができるそうです。協力して子育てをする時代の象徴ですね。特に授乳は左右それぞれ何分飲ませたとか、授乳を始めて5分過ぎると音でお知らせするなど、なかなか便利で感心しました。

新米ママは大変ですが、赤ちゃんからのプレゼントもあります。生まれたての赤ちゃんが見せる、笑顔のような表情のことを「新生児微笑(しんせいじびしょう)」と言うそうです。生後1ヶ月までの新生児期に、寝入りばなや寝ている間、ほんの一瞬赤ちゃんが目を閉じたままにっこりすることです。私も見ましたが、「あっ、笑った!」と嬉しい気分になりました。反射みたいなものでしょうが、「天使の微笑」とも言われるそうです。

小さな赤ちゃんは本当に無力ですが、澄んだ瞳で見つめられ、弱々しい声で泣いていると誰かが助けてやらねば、という気持ちになります。あの大統領も気難しい学者も口うるさいおばさんも、み~んな最初は同じ小ちゃな赤ちゃんだったんだ、と思うとちょっと愉快です。そして、すべての赤ちゃんが幸せに育って欲しいと心から思います。