第927回 「骨のあるヤツ」

10月31日            中村 覚

運転中のことです。靴に変な虫がくっ付いている、いや しがみ付いていることに気が付きました。 どこで拾ってきたのか・・・。さっきのコンビニ? そんなわけ ありません。とにかく見たこともない変な虫が靴の上でじっとしています。

車を脇に止めます。妙な形だったので、靴から剥がしてズボンの上に乗せ、写真でも撮ってやろうと。ところが、人間では目視できない足の先の鉤爪のようなものでビタッと張り付いているみたい。 無理に剥がそうとすると、ひょろりと長く か細い 足の何本かが取れてしまいそうな勢い。骨折ならともかく足が取れるのは さすがに気の毒。

慎重にミチミチ、ミチッとゆっくり剥がして膝の上に。 ん~、じっくり見ても やっぱり変。いやそもそも カマキリなんかも全体的におかしいのかもしれませんが、見慣れているだけに違和感がありません。でも初めて見る これは違います。

写真を撮った後、道の脇にひょいと放してやりました。実のところ、虫にそんなに興味がないので。

数日後、代表の筒井に話を聞いてもらっていた時です。
「グーグルの新しい機能が鼻歌だけで曲名が検索できるみたいです。気になっていた曲をより速く見つけることができ、どんどん便利になっていますね」。

ただ、ここまで喋った時に、ふと 反対のことが頭をよぎります。
「でも世の中、便利になってはいますが、例えば この虫の名前を調べるとなると、図鑑を1ページ1ページめくって調べるはめになりますよね?」と、さっきの写真を出しました。 すると

「これ、ナナフシ。」

「・・・えっ!? なんで知ってるんですか?」

本気でこの虫の名前を知りたかったわけではなく、どんどん便利になる世の中、一見 盤石そうに見えるシステムの隙を突いてやれ! そんな会話をちょっと楽しみたかっただけなのに、話が終わってしまいました。(笑)

「ま、長く生きてるからねえ。じゃあ 中村君、これ、知ってる?」
と、すぐにスマホで見せられたのが、こちら。

「なん で す か! これは?(驚)」
(さっきのナナフシは すでに たいしたことありません。かわいそうに。)

「そうなのよ、私もこれを初めて見た時はビックリした! カレハチョウ。」

説明によると、35年程前 宿毛市沖ノ島に住んでいた時に見たそうです。
「家の窓辺に枯れ葉があるので、つまんでポイッとしようとしたその時、枯れ葉がバタバタッと羽ばたいた!そりゃあ驚いたの なんのって。」
そのころはまだスマホもなく、今とは違い おいそれと写真に残すことができなかった時代。後になって本で知ったそうです。

それにしても、このカレハチョウなるもの、名前の通り枯れ葉そっくりで、おかしな姿です。しかも、貧相な体にのしかかるようなでっかい羽。お前、がんばってんなぁ~、重そう。

家康公の「人の一生は重荷を背負いて遠き道をゆくがごとし」、この言葉がぴったりの虫がいるんですね。
骨のあるヤツだ。(虫に骨はありませんが。)

第926回 「マスクとシールド」

10月24日

今年に入って、研修で大きく変わった要素の一つに、マスクやシールドがあります。

4月の新人研修にはマスク姿で臨みましたが、喘息持ちの私は何時間もしゃべっているとあまりの息苦しさに、軽い呼吸困難に。で、次にやってみたのがフェイスシールドでした。

息苦しさは解消されました。何より講師の表情が見えることが、コミュニケーション研修には重要な要素でもあります。マスクよりは密閉性は落ちますが、自分が出す飛沫を拡大させないという効果はあるようです。

でも、マイクを前に持ってくると声が遮断されるとか、長く話していると呼気がこもりがちで 曇ってくることがあって、別の選択肢がないかと探しました。

次に試したのが、口元だけのシールド。
最初アゴを固定されているようでしゃべりにくく、意外に違和感が大きかったです。使う内にしだいに慣れては来ましたが…。

そして最近、画期的なマイクシールドをテレビで見かけ、早速ネットで探して注文しました。それがこちら。

ハンドマイクに付けるタイプで、表情も見え、曇らないしノーストレス。声もマイクがよく拾えます。顔の真ん前でゆるくカーブして、飛沫を遮断してくれます。

横から見ると、こんな感じです。マイクを持つビジネス用なら、今はこれが一番でしょうか。もちろん、感染者が少ない高知の2020年10月現在での選択です。

with コロナの時代、昨年は想像もできなかったこうしたことが、今や日常の光景になっていますね。来年はどうなっていくのでしょうか。

さて、番外編。プライベート用で面白いと思ったのは、こちらです。

スカーフを使ったマスク。ちょっと中東の女性風?(笑)
ネットで見て、綺麗だなと思って買ってみたのですが、つけてみてまったく息苦しさがないのにはビックリしました!構造は、こうなっています。

サラッとしたポリエステル生地の裏側に、メッシュ素材が付いています。
これならファンデーションも付きにくいし、洗えますね。

そしてこれを買おうと思った一番の動機は、これです♪

スカーフとして使えること。タテが30cm足らずと小さく後ろがスナップなので、首回りがスッキリ収まります。で、マスクとしても使えると。なかなか優秀です。

何か面白いものがあれば、皆さんも教えて下さいね♪

第925回 「心の豆電球」

10月17日

先日まで暑かったのが、一気に秋になったような神無月の週末です。

実は昨日、本当に素敵な出来事がありました。今年はコロナ禍でメインの仕事となったリハビリテーション・カレッジの授業で 7月に担当したAさんが、わざわざ休憩時間に訪ねてきてくれたのです。

私の授業では、必ず最後にレポートを書いて頂きます。障害ケース・スタディの授業で私と中村がこれまでの人生を自己開示すると、少なからぬ学生の皆さんが自分のこれまでの人生をふり返り、何かに気づいたり語ったりしてくれます。それによってわずか数回しか担当できなくても、ときに彼らの深い心のひだに触れさせてもらえることがあります。Aさんもまた、そうでした。

社会人体験の紆余曲折から再び学ぶことを選び、悩みつつ頑張っている姿にとても心を動かされ、私なりのエールを送れないかと考えました。手紙もいいのですが、聞いてもらいたい普遍的な言葉を贈れないかと。それなら、やなせたかしさんの「明日をひらく言葉」です。

アンパンマンの作者、やなせたかしさんのこの本は、やなせさんご自身の寂しかった幼少期や劣等感、70歳近くまで売れずに苦労された人生、それでも前を向くことの大切さが書かれています。文庫本なので読みやすく、でも何かのときにはきっと心を支えてくれる素晴らしい言葉が沢山載っている、大好きな本です。授業はもう終わって会えないので、担当の先生に本を渡して欲しいとお願いしました。

そして昨日、違う学年の授業の合間、Aさんがわざわざ来て、お礼を言ってくれたのです。大きな封筒を渡してくれ、中には心のこもった手紙と綺麗なカードが。

アンパンマンに込められた やなせ先生の思いやメッセージ、人生経験の中で見出されてきた考え方や物事の捉え方は、とても勇気と元気をもらえました、とあり「本当に良かった」と胸が一杯になりました。中でもAさんが気に入ったと書いてくれた言葉。

「人生は椅子取りゲーム、満員電車に乗り込み、あきらめて途中下車せず立ち続けていたら あるとき 目の前の席が空いた。」

まさに私が伝えたかった箇所を手紙に綴ってくれ、思いが伝わったことに、心の豆電球がぽっと灯ったような感じがしました。

秋が好きだというAさんが贈ってくれた、柿のスタンドカード。
私には、ダイヤモンドよりも輝いている 素晴らしい宝物です♪

「これから先、たぶん何度も生きづまることがあると思いますが、そんな時はあんぱんとコーヒーを飲みながらゆっくり読ませて頂きたいと思います。」

う~ん、いいなぁ!(笑)

心優しいAさんにとって、稔りある秋でありますように。
そして、皆さんの明日もひらけますように。