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第354回●2009年9月6日(日)

 計画された偶然性


 先月、21世紀職業財団さんのお招きで「出産・育児から再就職へのチャレンジ」として、私自身の体験をお話させて頂きました。その中で、ちょっと面白い理論を披露したのでご紹介しましょう。

 実は私がこの仕事を始めたのも、大学院に行ったのも、交流分析のインストラクターになったのも、自分で目標を立てたものは何もありませんでした。偶然、周囲の人たちが勧めてくれた誘いを「そうですね」と受けただけだったのです。私はなんてラッキーなんだろう!と思っていたのですが、その話をある先生にしたところ、「計画された偶然性ですね」と教えて頂いたのです。

 「計画された偶然性」の提唱者はスタンフォード大学教授、ジョン・クランボルツ氏です。これは簡単に言うと「とにかく行動してみれば、偶然の出会いやきっかけの積み重ねで、思わぬチャンスに出合うことがある」ということです。

 クランボルツ氏自身、若いころにテニスに熱中しすぎたため、大学3年からの専攻分野をなかなか決められなかったそうです。そこで、テニスのコーチに相談したところ、コーチはたまたま心理学を専攻した人だったため、クランボルツ氏に心理学を勧めたそうです。クランボルツ氏は、その提言に素直に従い、今では世界的に著名な心理学者となりました。彼は、「心理学の世界に偶然足を踏み入れ、心理学者になった私ですが、今ではこれが自分にとっての最高のキャリアだと確信しています」と述べています。

 もちろん、行動したからといって、いつも「チャンス」に出合うとは限りません。時には失敗したり、不運に見舞われることもあるでしょう。だからといってじっと動かないままでは、何も起きません。さまざまなことに関心を持ち、失敗を恐れず積極的に動くことで、自分の人生やキャリアにつながるチャンスを得られるのです。

 つまり、自らが計画して起こした行動(「明日はあの人に会ってみよう」など)から、自分を成功へと導く偶然のチャンスをつかみ、それをその後の人生に生かそうとするキャリアづくりが、「計画された偶然性理論」なのです。

 生まれつき特定の才能に恵まれたごく少数の人々を除き、多くの人は自分が何をやりたいかがよくわかりません。したがって、まず行動してみて、実際今やっていることは自分がやりたいことか、好きになれそうかを検証した方が、適職にめぐり合える可能性が高くなるというのです。つまり、「自分が何をやりたいかは、実際やってみないとわからない」ということですね。これはインターンシップをしてみると自分にその業界が合うか合わないかが分かるようなものでしょう。

 また、行動をすることで予期しない出会いやきっかけに出会う回数が増えますが、それらの中に自分のキャリアの方向性を決めるような大きなチャンスが含まれています。チャンスは向こうからはやってこない。私は、私自身のキャリアは恥ずかしながら、「計画された偶然性」がもたらしてくれたものばかりだと思っています。でも、そこから「YES」と一歩踏み出すのは、やはり自分の意識ですよね。


 この予期せぬ偶然(チャンス)を作り出すための行動において留意すべき点が5つあるそうです。

1.好奇心
 自分の専門分野や関心があることだけに閉じこもらず、自分の知らない分野にまで視野を広げ、さまざまなことに関心を持ちましょう。これは、新たな分野で知識を学び続けることでもあります。

2.持続性
 いろんなことに首を突っ込むのはいいのですが、あまりあっけなく投げ出してしまうと、何も残りません。どんな仕事であれ、何らかの手応えを感じたり、向き不向きを判断できるようになるためには、相応の努力、期間が必要です。最初のころにうまくいかなくてもめげずに続けてみましょう。

3.楽観性
 例えば、意に沿わぬ異動や転職を、ネガティブな出来事として悲観的に受け止めるのではなく、自分の知らない世界に飛び込むチャンスだと楽観的にとらえましょう。「人間万事塞翁が馬」ということわざがありますが、どんな出来事も本人が楽観的に受け止めれば、すべては自分のキャリア、人生にとってプラスに転じることができるのです。
 例えば障害児を持った経験も、後で医療福祉分野の勉強に役立つように。

4.柔軟性
 ひとつのことに固執しすぎない。いろんな可能性を捨てないで持っておく。予期せぬ出来事に柔軟に対応する。ちょっと楽観性に通じる部分があると思います。

5.リスクテイク 
リスク(危険、冒険)を受け入れること。自分の知らない世界に飛び込むことは勇気がいります。何が待っているかわからないからです。しかし、あえてリスクをとることで、自分の可能性に新たな光が当たります。


 どうですか?「計画された偶然性」、ちょっと面白いでしょう?
就職活動を始める前の高校生や大学生に教えてあげたい話です。

 
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