第1101回 「追手前伝説、隠された遺構~前編」

4月6日

新年度がスタートしましたね。研修での初々しい新入社員の横顔に、こちらもリフレッシュさせてもらっています。

さて、3月の年度末に情報を頂いて 追手前高校に向かいました。学校の西半分で足場が組まれ、改修工事が始まったのです。新たな発見もありましたので、2回にわたってお伝えします。

まず、登録有形文化財になったレリーフが付けられました。玄関の柱に付ける案もあったそうですが、皆さんに よりご覧頂きやすいようにと外の門柱の校名の下に取り付けられました。

追手前高校の校舎は、今年で93年という歴史ある建築です。

「この建造物は貴重な国民的財産です」という文章が輝いています♪

さて、中に入りましょう。今、玄関を抜けた中央階段のホールはこう仕切られています。高知県が【高知県立学校施設 長寿命化計画】を策定し、追手前は校舎全体の建て替え工事ではなく、劣化している箇所を補強し強度を高める「長寿命化工事」を行うことにしたそうです。(「追手前タイムズ」より)

まずは西半分の、本館1階の1年生の4教室と西側トイレから工事をしていきます。そのためこのような壁で、生徒と工事にあたる職人さんの動線を完全に分けているのです。ちなみに1年生は全員、今年度は本館ではなく新館で学ぶことになったとか。

南海トラフ地震にも耐えられるよう、窓は今のスチール枠から、より強度が高いアルミサッシの二重ガラスに替えられます。1年生の教室では高さが50センチあった教壇も、天板を張り替えている最中でした。

驚いたのは、教壇の中に古い木切れや紙などのガラクタがたくさんあったこと。こんなものまでありました。

なんと、ワラジです!昭和6年(1931年)の建築当時のもの?それとも後年の改修工事の頃のものでしょうか…

丸まった書類もあったので、設計図かと期待して引っ張り出してみると…

「試験場 中学校」「試験場 高校」…入試の時のものかと思ったら、「株式会社○○(破れて読めません)○○試験場」。ひょっとして採用試験の会場に貸したのでしょうか?でも、なんでこんなものが教壇の中に?うーん、ミステリーです(笑)

そして今回、新たな発見となったのがこちらの西側トイレ。(事務長さんが説明してくださっています)

1階の壁や天井はコンクリート造り。場所柄、配管のための穴がいくつも開いています。建築時の昭和6年当時の水洗トイレは、とても珍しかったことでしょう。

こちらは2階のトイレ。驚いたことに、天井を剥がすとその上に、漆喰が塗られた天井が出て来たのです。昭和6年の建築時のものではないかと思われますが、ゆがみもなく、とても93年もたっているとは思えません。まるで、隠された遺構とも言えます。

さらに、こちらが3階のトイレです。2階と同じく天井を剥がすと、きれいに塗られた漆喰の天井が出て来たそうですが、こちらは穴もなく、とてもトイレだとは思えないほど。

実際、私はその美しさにすっかり見入ってしまいました。誰がトイレの天井裏に、こんな格調高い天井が隠れていると想像できたことでしょうか!

高知県の建築士の皆さんが協会の定例会の後、ここを見学なさってしばし見入っていらっしゃったそうですが、その気持ち、わかります。ヒビも入っておらず、逆に今、これだけきれいに漆喰を塗れる職人さんは少ないのでは?と思えるほどでした。

ということで長くなりましたが次回に続きます。