第1058回 「神秘の伊尾木洞①~前編」

6月3日

大人気のNHK朝ドラ「らんまん」。その第1回に高知県安芸市の伊尾木洞での映像が映ったことで、今、たくさんの観光客が訪れています。伊尾木洞は、高知市から車でおよそ1時間。国道からすぐに行けるのですが、いの町の「にこ淵」のように近年になって注目され始めたスポットで、その異世界ぶりが人気を集めています。

私が5年ほど前に行ったときには洞窟内の道が水没していて、すぐに断念しましたが、改めて訪れてみました。「らんまん」効果が早速目に見えていました。

国道55号線沿いに、広い無料駐車場が新設されていました。牧野富太郎博士の笑顔が印象的なのぼりがひるがえっています。できたばかりのようで、数十台駐められる広さがあり、伊尾木洞には50mほどの近さです。

道を挟んで南側には伊尾木洞観光案内所があり、無料で長靴を貸し出してくれます。

マムシがいることもあるらしいのでサンダル履きは絶対ダメ、最低でもハイキングシューズが必須です。(私はそれでも苦労しました)川の中を歩くポイントも多いので、できれば手持ちバッグよりリュックタイプで両手を空けておいた方が万全でしょう。(私はそれで後悔しました)

さて、出発です。

住宅街の横の小さな川に下りていくと、すぐ洞窟があります。その前に「伊尾木観光のみなさまへ」という案内板がたくさん。

「伊尾木洞内の通路が部分的に水に浸かっている場合があります。伊尾木洞観光案内所にて長靴の貸し出しをしておりますのでご利用ください」「落石・頭上注意」などが目を引きます。

では、入っていきましょう。
見た目は小さく見えますが、幅3メートル、高さ5メートル、長さは40メートルほどあります。約300万年前に海の中で堆積した 地層が隆起して、 岩が 渓谷からの水で 浸食されてできた、天然の洞窟です。

左側は歩きやすいように、コンクリートで足場を固めています。大雨になったら道は水没し、ここは川になるのでしょう。

この日は30度近い暑い日だったのですが、一気に気温が下がりました。洞内の気温はおよそ20度で保たれているそうで、ひんやりして気持ち良かったです。

洞の中はコウモリが住んでいたり、左側から滝のようにしぶきが落ちてきているポイントもありました。ご覧の通り、幽玄を感じる世界です。
写真中央に人が立っているので、クリックして その大きさを感じてみて下さい。

洞を抜けると一気に、古代にタイムワープしてきたように感じます。国道からわずか100メートルなのに、別世界が広がっています。

何でしょう、この世界観は。不思議です。

伊尾木洞の奥のシダ群落は、国の天然記念物に指定されています。日本に広く分布する多くのシダが、こうして1か所に生息していることは大変珍しいためだそうです。

ホウビシダ、コモチシダ、ハゴロモシダなど約40種類ものシダが共生しているとか。「後世にもその姿を留められるように、シダの採取・伐採などないよう保護にご協力ください」と呼びかけています。

全身で植物の存在感や、水辺のマイナスイオンを浴びている感じです。なんだか精霊が飛びまわっていてもおかしくないような。カメラにも不思議な光が映り込みます(笑)。

こんな風に足下はかなり悪く、道なき道を行く感じ。どこを通るのかパッと見て決めて、石の上に乗る。グラグラしたら石を変え、バランスを取って渡っていきます。最初はフラフラしましたが、徐々におてんばだった子どもの頃のカンを取り戻しました。

「おまん、新種じゃないかえ?」なんて、笑顔の万太郎が見えるようです(笑)

ところがここで、私は驚きの立て札を見てしまいます。

「滝まで300m」。さ、300メートルーー!?まだこの悪路を?

(私はまったく何の予備知識もないままに訪れたので、洞を抜けるとすぐに滝に行けるようなイメージがあったんですが、実は洞から滝までは400mほどあったのです。

実際、安芸市観光協会のホームページには伊尾木洞 観光ガイドには「通常コース」と「冒険コース」の2種類があり、通常コースは洞から200mで折り返し。冒険コースは洞から400m地点で折り返し、となっています。だからこの時点ではまだ、私は通常コースにいたのですね。)

「でもせっかく来た以上、滝まで行ってみたい!」と心に決め、再び岩だらけの道なき道を歩くことにしました。長くなりましたので、この続きは後編で(笑)。

第1057回 「ご縁に支えられた『追手前伝説』」

5月27日

今週の23日(火)高知新聞の「所感雑感」欄に、『追手前伝説』にまつわるお話を書かせて頂きました。

高知新聞社には、大変ご恩を感じています。『追手前伝説』の初版は昨年11月に出たのですが、12月に高知新聞の記事にして頂けたことで、初版が数日で売り切れになったのです。やはり地方紙の影響力はすごい!と痛感したことでした。

実は今回初めて知ったのですが、文章自体の著作権は私にあるので自分のブログなんかでこの文章を載せるのはOKなんだそうです。私はずっと、新聞社の依頼なので新聞社に著作権があると思っていました。

ただレイアウトの著作権は新聞社のものなので、新聞記事を写真で貼るのは基本NGだそうです。でも、文字が読めない程度に写真で貼るくらいなら構わないということで、上の写真はクリックしても大きくなりません。もちろん新聞記事へのリンクはOKですが、高新のWeb版には今回の記事は載っていないので。(記事の本文は、このコラムの最後に掲載しますね)本当に知らないことだらけで勉強になります。

今回の記事のご縁で、「江ノ口地区の地域コミュニティーで『追手前伝説』のお話をしてもらえませんか」との ありがたいお話を頂きました。来月には生涯大学でもお話しさせて頂きますので、嬉しい機会が増えます。本当に、こうしたご縁に支えられていることを実感している今日この頃です。

ということで、よろしければ記事の内容をお楽しみ下さいね。

  ご縁に支えられた『追手前伝説』   筒井ジェーン典子
 
 ご存じでしょうか?追手前高校の校舎は昭和6(1931)年、卒業生だった間組の小谷清社長が予算不足で大赤字を承知で建てられたことを。「名誉な仕事だから」と郷里に記念的建築物を残されたのですが、初めて知ったときその気概に打たれました。母校が何をしてくれる?ではなく、母校のために何ができるのか。それが私には『追手前伝説』でした。

 昨年11月19日追手前高校の創立記念日に出版したこの本は、築91年の学校建築写真集に物語と資料を加えたものです。コロナ直前の同窓会ツアーで時計台などを見学しその素晴らしさに再び感銘を受け、貴重な建築写真を残そうと自社のホームページに載せました。すると神奈川の友人から「これは本にするべき」と強く勧められたのが書籍化のきっかけでした。
 コロナの期間で研修講師の仕事が激減したのをチャンスに、自分が面白いと思えることに取り組みました。貴重な時計台、天皇陛下のお写真を納めた奉安殿、空襲の弾痕が残る旧貴賓室(校長室)など、生きた日本史の残る校内を撮影していき、半世紀前に聞いた「校舎の下には池がある」という伝説の真実を見たときには心が震えました。

原稿の締め切り後、友人が平和資料館「草の家」に空襲時の焼夷弾があることを思い出し、伺うと休館日なのに館長さんにお会いでき、焼夷弾を撮影。『高知の空襲』という写真集の焼け跡に残った追手前の校舎が強烈で、ぜひ転載させて下さいとお願いし、ご快諾頂けました。このご縁で、焼夷弾を屋上から投げ捨てて校舎を守った伝説の畑久治校長先生の話も掲載できました。本の制作は、地元のリーブル出版の方々が追手前高校の公式ブックを作る意気込みでご尽力くださいました。

 そして11月19日、新聞に「追手前高校、登録文化財に」の記事が。偶然、国の登録文化財答申・創立記念日・出版の3つが重なったのです。なんてご縁でしょう!登録文化財をめざそうという動きは何年も前からなので、奇跡的なタイミングでした。さらに12月には高知新聞が『追手前伝説』を記事で取り上げて下さり、あっという間に本の在庫がなくなりました。恐るべし、高新!(笑)

 すると「欲しいのに、手に入らん」、本屋さんの「僕らも困っちゅう」という声が届くようになりました。それがとても申し訳なく、第2刷を時計台から飛び降りるつもりで増刷しました。自費出版のため再び資金が必要でしたが、間組の社長の気概に憧れたことが原点でしたし、何より多くの方々から『追手前伝説』にご厚情を頂けて本当にありがたいことです。定価2千円以上する本を、半年近く地元本屋さんの週間ベストセラーランキングに入れてくださったこと。県外の友人に送ってくださった方々、新聞記事を売り場に飾って下さった書店員さん。本屋さんでのトークイベントも忘れられません。娘さんに支えられた90歳くらいのご年配の方から数十年ぶりの同級生、現役の高校生まで直接お会いでき、深く感謝申し上げます。

 最新ニュースとしては、時計台の西面の壊れた文字盤が修復されました。校舎の鉄の窓枠も地震対策で交換されるため、12月から校舎は2年ほど覆われるそうです。でも、建築当初からの校友会室の窓枠は保存されると伺い、一安心。ともあれ追手筋から追手前高校の写真を撮りたい方は、今がお勧めです。

第1056回 「松葉杖のゴム3話」

5月20日          中村 覚

友人と買い物に行った時のことです。横を歩きながら私に聞いてきます。
「これ、おNEWやけど、わかる?」そう言われたので改めて友人を見ると
見慣れない上着が目につきます。 「上着かえ?」 「そう。」

なるほど、これは負けてはいられません。「実は俺も おNEWやけど、わかる?」
今度は友人が私のつま先から首辺りまでをまじまじと見ます。
「ズボンか?」「違う。」「靴?」「違う。」
「松葉杖の先のゴムよ。」
「わかるかぁっ!」(笑)

これ、松葉杖に関する 数少ない まぁまぁ笑える話かと自分で思っています。

ところで、先日医療従事者を目指す学生たちの授業で、松葉杖を使う生活においてどんな時に不便さを感じるのか、といったことを導入部分として話しました。

こういう話は生活感があってこそですから、杖の先からゴムを取り外して全体によく見えるようにして「皆さん このゴム1個、いくらぐらいだと思いますか?」と聞いてみました。(今時、調べればすぐわかることですが) こういう話もいいかなぁと。

まず大まかなに「1000円ぐらいはするんじゃないか。とお考えの方は?」 そうすると全体の半分ぐらいが手を挙げてくれました。更に進めて「いやいや、2000円以上はするんじゃないかと思う方?」 するとまた半数ぐらいが挙手してくれました。

松葉杖に欠かせないこのゴム、必要性や安全面から考えてもしっかりした
物でなければならない。 つまり金額もそこそこ張るんじゃないかと!
だいたい皆さんがそんなふうにお考えなのが、初めてわかりました。

でも実は 1個 500円ですけど…。すでにこの値段を言いにくい雰囲気でしたが、正直にそう言うと、拍子抜けしたような笑い声も漏れてきました。(笑)

私にしてみれば、あまりに日常的な物 過ぎるので安いに越したことはない。
しかも摩耗すれば買い替えなければなりません。新品に取り替えたところでゴムの弾力性は上りますが、心は弾みません。

今回のように、ゴムの値段をきっかけに話をすることは、全体的により集中してもらえるとわかり、新しい気付きでした。

ところでこのゴムですが、新品でもある程度 摩耗していても、どちらでも雨の日は滑ります。地面がアスファルトだと大丈夫ですが、スーパーなど天井の照明が反射してテカテカと光っているキレイな床は気が抜けません。 経験上、スーパーの床よりもコンビニエンスストアの床がより滑りやすいかなぁと。

ところがつい最近、雨の日でもほぼ滑らないコンビニエンスストアの床をたまたま見つけました。ある雨の日のこと。「気を抜いたらまた滑るぞ」と心配しながらオープンしたばかりの店に入りました。すると「あれ?」床の感触が違うのです。雨の日なのに滑りそうな気配がありません。床に目をやるとテカテカ光っているあの床ではなく、色合いを押さえた一見、大理石?と思えるようなシックな感じの床なのです。

何歩か歩くうちに、「これは本当に滑りにくい!」とわかり、こんな床ができているのかと嬉しくなり、会計の時に「いや、実はお店の床は雨の日は よく滑るのですが、ここの床は滑らないですね」と。自分がしゃべっている内容がそれほど一般的ではないとわかっていたのですが、とにかく聞いてもらいたかったのです。

するとスタッフの方(多分、オーナーさん)が、「実はそういうコンセプトで当店はこの床を採用しました」と。床の材質の選択肢として新たにこういった物が出始めているようなのです。「当店を含めて、現在 高知県では4店舗がこういった床にしています」とのことでした。

ぜひこういった場で見てもらいたいと思い、床の写真撮影の許可をお願いしたところ、快くオッケーしてくださったのですが、「それをネット等にあげるのはちょっと~」と言われまして。
今後もまた行きたいお店なので、ニコニコ笑顔で退散してきました。(笑)