第968回 「大雨の長い長いトンネル」

8月21日

こんなにずっと 危機感にさらされ続ける8月は 記憶にありません。
新型コロナの第5波がついに高知にも押し寄せたこともそうですが、11日から10日間も降り続く大雨は、まるで梅雨末期。長い長いトンネルのようです。専門家の「大量の水蒸気が流れ込み、まるで上空に川が流れているようだ」とのコメントはショックでした。

九州や各地で被害が出ていますが、降り始めからの総雨量は20日には高知県馬路村魚梁瀬(やなせ)で1150ミリを超えました。あそこが1200ミリまでは大丈夫だろうと思いつつ、これから週明けも降り続く予報に加えて台風12号が発生。「週明けには影響が出そう」とのニュースに 大雨には強い高知県とは言え、心配になってきます。

思えば2018年の西日本豪雨の際、被災地の72時間降水量の全国トップ5地点の4つまでがすべて高知県でした。その時の1位の馬路村魚梁瀬が1319.5ミリ、2位の香美市繁藤が985.5ミリ…。各地で土石流が起こり、死者が広島81人、岡山59人、愛媛26人と甚大な中、高知は2人で、メディアから「大雨の割になぜ被害が少ないのか」と注目されました。

高知県は、1998年の高知豪雨(高知市だけで約2万棟が浸水)や1970年代の連年の台風災害など過去に甚大な浸水や土砂災害を受けて来たため、排水能力向上や河川改修などの治水対策に長年取り組んできました。目に見える道路などはなかなか整備されなかったけれど、目に見えない安全に予算をかけてきたのでしょう。たとえば高知市の下水道は、時間雨量77ミリの豪雨に対応できるよう整備されています。(当時は画期的でした)

大雨に関して心配性の私がよりどころにしているのは、「雨雲レーダー」です。ニュースでもよく見かけますよね、気象レーダーにより地図上に 雨の状況を雨量ごとに色分け表示する、あれです。やみくもに不安をかき立てるのではなく、データなどで「今後の予報」を確認し、何時頃にひどくなるなどのピンポイント予報で、不安が軽減されています。

最近は気象庁、放送局、ウエザーニュースなどレーダーの情報提供をしてくれるサイトもいくつかあり、助かっています。しかし「え、明日は朝からずっと一日中、黄色から赤の豪雨!?どうしよう」とオロオロすることも何度かありました。
ところが、実際は予報とはかなり違ってそんなに降らず、「あれ?」となることも。

講師仲間の友人曰く、「予報と予想は違うからね。」

予想:あらかじめ想像すること
予報:事前にデータを集めておき、結果を推測して公表すること

なるほど、私でも「予想」は可能ですが、「予報」となるとしっかりとしたデータに基づくものだから、専門家によるものってイメージですね。

ここで気づいてしまいました。雨雲の動きの「24時間予想」としてよく使っていた某局のサイトは「雨の予想」。日本気象協会の15時間先までのは「雨の予報」。うーーん、そうだったのか!

今後はより賢く、雨雲の今後の予報レーダー画像を見ることができそうです。
そして、とにかくこの長雨のトンネルから、早く抜け出せますように。


(追記)馬路村へ向かう安田町の県道12号線では、8月21日に土砂崩れが発生。馬路村魚梁瀬では23日時点で1400ミリを超える降雨があった。道路復旧のめどは立っておらず、1時間半かかる北川村経由の迂回を強いられている。
しかし、被害に遭った人がいなかったのは不幸中の幸いだった。

第873回 「治水対策」

10月19日

12日から13日にかけて台風19号で被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。どうか温かい場所で、ゆっくりとお休みになれる日々が早く戻りますように。

スーパー台風と言われた19号の被害は東日本で本当に大きく、国土交通省によると、台風19号により決壊した堤防の数は全国で、130カ所にのぼったとか。連日NHKでは大きく時間を割いて関連ニュースを伝えています。たびたび豪雨に襲われている高知県でも、人ごとではなく、心が痛くなります。

東京都内では下水管の排水能力は1時間に50ミリ。降雨量が多い高知市の場合は77ミリですが、近年多発している時間雨量100ミリ超えの場合には、とうてい追いつきません。温暖化の影響もあり、今後ますます豪雨がひどくなることを考えると、不安になります。

(写真は2014年の高知市浸水時)

今回の規格外とも言える降水量には、「地下神殿」とも言われる首都圏外郭放水路が大きな役割を果たしたと言われています。どこかで見た写真から、大きなプールのようなものかとイメージしていたのですが、地底50メートルに、長さ約6.3キロを流れる、世界最大級の地下放水路だそうです。

高知県は1998年、高知市の3分の1が水没したとも言われる98豪雨など、過去に甚大な被害を受けてきた経緯があります。そのため、豪雨時の排水能力の向上や河川の改修などの治水対策に長年尽力してきました。ポンプによる排水能力は、全国でもトップクラスだそうです。(その代わり、都市整備などはずいぶんと遅れていましたが)

実は高知市には「地下神殿」こそありませんが、それに近い「雨水貯留管」が昨年、完成しました。高知市宝町から高埇の産業道路の地下には、東西約2.7kmに及ぶ直径3.5mの管が通っています。高知駅から北への420mの管も合わさり、合計で25mプール約70杯分に相当する2万6400トンを貯水することができます。下水道管が一定の水位を超えると、あふれた水が貯留管に流れるような仕組みになっているようです。

こうした「モノ」に対して「人」もまた、頑張っています。
2014年の台風12号の豪雨の際には、72時間で829.5ミリを記録し、高知市内全域には避難勧告が出されました。(上の写真です。)

この時 鏡ダムの管理事務所ではゲートの開閉をコンピュータ制御から手動に切り替え、水位と降水量を見極めつつ数cm単位でダムの開閉を行い河川の氾濫を防いだ「ダム職人」がいたそうです。すごい!まさにA I をしのぐ人間の英知です。

大型の台風や集中豪雨で、時間雨量100ミリ超えがあちこちで頻発するようになり、気象は大きく変わってきました。こういったシステムで街を、命を守ることが全国的に今後の重要な課題となるのでしょう。

第815回 「高知自動車道 崩落現場は今」

9月1日

2018年の夏は、豪雨ばかりが記憶に残ります。7月の西日本豪雨災害は、今もその爪痕を大きく残していますし、現在も猛烈な台風21号が不気味に北上しています。

高知自動車道上り線も7月に立川トンネル手前が崩落し、衝撃でした。西日本高速道路によると、高速道の橋が崩落したのは西日本で初めてだとか。本格的に直すのは年単位でかかるらしく、現在は大豊から新宮まで10kmほどが下り線を使った対面通行となっています。崩落後、初めて上り線を通ったときをリポートします。

大豊ICを過ぎると、すぐに片側1車線通行となりました。

車道の白線が引き直されて、右に寄っています。
「この先対面通行 速度落とせ」の看板が見えます。

そのまま走ると、何の違和感もないまま、下り線に出ました。移行があまりに早くて、写真が追いつかなかったほどです。

ここは高速道の上下線が並走していて高低差もなく、比較的工事もやりやすかったのではないでしょうか。

そして、10kmの対面通行が続きます。結構長いなと感じました。

高知自動車道は以前は2車線の対面通行でしたが、2008年から上下線が分かれ4車線化になりました。それから10年もたつので、「対向車が間近に迫る対面通行は緊張する」と夫が言っていました。

そして、崩落現場が真正面に見えてきました。
上り線はすぐ横を通るのです。

立川トンネルの手前の立川橋が、ざっくりと大きく崩落していました。
そのすさまじさに、言葉をなくします。

写真ではわかりませんがこの下にかけて、50mほど崩れているのです。唯一の慰めは、人的被害がなかったことでしょうか。すぐ近くに人家もあるので。

現場から少し走ると、対面通行も終わりです。
左に誘導する車線が描かれています。

戻りは少しだけ高低差があり、上って行きます。

元の上り線の続きに出ました。

何事もなかったかのように、上り道路は続くのでした。

立川橋は2007年12月に完成し、2008年3月から供用が始まりました。つまり、まだわずか10年しかたっていないのに崩れてしまったのです。改めて、高知自動車道は厳しい山岳道であることを突きつけられた思いでした。

高速道は命の道路です。止まった時にはしばらく高知でも食料品や日用品などが品薄になり、困ったものでした。全面復旧はまだ見通しが立たず大変だとは思いますが、関係者の皆さま、ぜひよろしくお願いいたします。