第1052回 「堀内佳さん、愛を歌う」

4月23日

NPO「こうち音の文化振興会」が運営する比島町の「カフェ カプリ」で、22日にシンガー・ソングライター 堀内佳さんのライブが開かれました。この日は3部構成だったようで、2部の「愛を歌う」と3部の「トークカフェ」を楽しませて頂きました。実は私は堀内さんのライブをお聴きするのは初めてで、とても楽しみにしていました。

1曲目の「笑えないピエロ」で、いきなり空気が変わりました。1980年代に簔谷(みのや)雅彦さんが歌った隠れた名曲ですが、堀内さんの愁いを含んだ声質と悲しい恋の歌が引き立て合って、その世界にすっかり引き込まれました。(すごい、来て良かった!)と大感激!

ラジオでおなじみの「こんにちは、堀内佳でーす」というごあいさつ。なじみのお客さまとのかけ合いを含めた温かなトーク力と、素晴らしい歌声でのオリジナルソングの数々に、皆さん浸っていらっしゃいました。

堀内さん曰く「僕は寂しい辛い恋の歌が好きで、歌は泣けてナンボ(笑)」とのことで、堀内さんの作られる歌もそうらしく。確かにマイナーなメロディーで、サビに向かって盛り上がっていく曲が堀内さんの世界観を作り出していて、そういう歌が大好きであろう方々(9割は女性でした)が聞き惚れていらっしゃいました。「一番近いあなたへ」という直球のラブソングは今回、英訳されて「My dearest love」という曲になっていました。

また、年を重ねていくごとに「男女の愛」から「人類愛」とか「平和を愛する」「生き物への愛」など大きな愛がわかるようになったそうです。事故のニュースでも「あぁ、事故があったんだ」から、「えっ、人は!?」「なんとか助かって!」と思うようになった、と。

特に、世界中で紛争が起きている今だからこその 強烈な印象を受けた曲が、「平和の武器」でした。

悔しくてじっとしてられないほど
悔しくて誰かを殴ろうとしても、ぼくの手は動かない
代わりに膝小僧に涙がポロポロ落ちた
殴りたいのは一瞬の怒り
殴ってしまえば新しい怒り
殴れないのは 平和の武器

これは20年前、松兼 功(いさお)さんという重い脳性小児麻痺だった詩人の方が作られた歌詞に、堀内さんが曲を付けた歌だそうです。改めて今歌ってみると、「そうか、どんな武器よりもすごく大事なのは平和の武器なんじゃないか」と感じられたそうです。お話を伺っていると、堀内さんの高い知性と人間性に惹きつけられます。

その上、ラジオパーソナリティーで培った状況対応力をお持ちですから、ピアノの楽譜が見つからないというハプニングにも余裕で(15分も)ユーモアを交えて予定外に歌われていたのは、さすが!で印象に残りました。

3部の「トークカフェ」では歌なしで、堀内さんがゲストとして色々とお答えくださり、笑い声が響く本当に楽しいひとときで、人間「堀内佳」さんとしての魅力が詰まった珠玉の時間を楽しませて頂きました。本当の意味でカッコ良く年を重ねるって、こういうことだなぁと感じ入りました。

堀内さんは 全国で特に中高生に対し、『命の大切さ』『前向きに生きることの素晴らしさ』 などのメッセージを歌にこめて何十年も伝え続けていらっしゃいます。こうした方が高知にいらっしゃることを誇らしく思います。

最後に。6月4日(日)には中央公園で「水のふるさとフェスティバル」というイベントで、14時から堀内さんが歌われる予定だそうです。ご興味のある方は、ネットやラジオでまた、情報確認して頂ければと思います。

第1040回 「堀内 佳さんとのご縁」

1月21日

先日、貴重な体験をさせて頂きました。高知放送で30年以上ラジオパーソナリティをなさっている、シンガーソングライター 堀内佳さんの番組「堀内佳の気まぐれターンテーブル」で、ゲストとしてお招き頂いたのです。

高知市内の、とあるスタジオにお伺いしました。副調整室の様々な機械の横を通り抜け、奥のスタジオにお邪魔します。

堀内佳さんは四万十市生まれで、高知では有名なシンガーソングライターです。命や人権からラブソングまで幅広いテーマで、学校関係を中心に国内・海外と、ギター弾き語りコンサートを続けていらっしゃいます。

私の二人の娘も学生時代、それぞれの学校で堀内さんのコンサートを体験していますが、次女は中学生の時、学校コンサートで堀内さんの歌「2匹の犬」に心打たれ、「友達と泣いたわ~」と話していました。

実は『追手前伝説』が出版されたばかりの昨年11月、Facebookで堀内さんが本にエールを送る投稿をなさっていて、それがきっかけでご縁ができたのです。

私もはるか昔、NHKでニュースキャスターをしていたことがありますが、驚いたのは堀内さんの高い才能です。相手を緊張させないためでしょう、打ち合わせを一切しないのに 自然なお話で色々と引き出してくださるのはもちろん、あれこれと自由に話を広げても時計も見ずに時間ピッタリに納めるのには、神業かと驚きました!

2回に分けて、『追手前伝説』の裏話を初公開しちゃいましたが、堀内さんと楽しくお話させて頂くうちに あっという間に時間が過ぎました。豊かな感性や配慮でのお話し上手なだけでなく、展開や構成など冷静に判断なさる論理性も高い方で、そこにも感銘を受けました。

それは きっとこれまで堀内さんが歩まれた視覚障害という運命と共に、磨かれた力なのだろうと推察します。そういう大きな命題があるからこそ、人生に向き合う力と人間力が磨かれることは、スタッフの中村や様々な方々を通じて学ばせて頂いたことでもあります。

堀内さんが手元に置かれているのは、点字ディスプレイという機器です。
昔は紙で点字を打っていましたが、今やパソコンと接続すると画面上に出ている文字データを点字で表示でき、単体でも点字データ、テキストデータの読み書きができるようです。紙で読むよりディスプレイ上の点字の方が読みやすいとか。点字だけでなく音楽や朗読の再生、録音などもできるそうで、すごい!パソコンと同じような感じでしょうか、科学の進歩が嬉しいです。

私は医療系の専門学校で授業をしているため、こういう実際に使われている機器を教えて頂けるのは、とても勉強になります。

番組「堀内佳の気まぐれターンテーブル」は、月曜日から金曜日の13:15~13:25 。私の回は、来週の26日(木)・27日(金)です。

実はグランドソフトボールの高知県代表選手もなさっている堀内さん。体の鍛練も、見習わなければ…(笑)堀内さんの、人としてのカッコイイ生き方を間近で見せて頂けて、貴重な体験でした。堀内さん、本当にありがとうございました。

第1030回 「ギリシアの哲学者、エピクロスさん」

11月3日          中村 覚

突然ですが、紹介したい人物がいます。古代ギリシアの哲学者、エピクロスさんです。プラトンやアリストテレスと並ぶ人物だということです。プラトンやアリストテレスと言えば、ちゃんと覚えていないとテストで点数が取れなかったような「超」の付く有名人。

ところが、ことエピクロスさんに関しては今回、初めて聞く名前でした。(私が勉強不足なだけとも言えますが。)ちなみにエピクロスにだけ「さん」を付けているのは、本を読んで親近感が出たからです。(笑)

このエピクロスさん、紀元前341年に誕生~とネットに書いてありましたが、昔過ぎて、10年や30年、いや100年の誤差があったとしても一向にかまいません。それぐらい昔々の人です。胸像の写真なんかもありましたが、文章を読んで勝手にイメージしたお顔とだいぶ違っていたので、自分でちょっと描いてみました。こうするとより親近感も湧きます。(笑)

エピクロスさんのことを知ったのは、「グランゼコールの教科書」という本をわかりやすく要約している文章を読んだ時のことです。その中で約10行にわたりエピクロスさんの事が書かれていました。これがシンプルでわかりやすく、珍しく読後も頭にちゃんと残ったのです。(笑)

エピクロスさんは「幸福」とは心の動揺の不在。大まかに言えば、心の安定でしょうか。その安定と対極にあるのが、心の動揺です。その動揺の元になるのが、人が誰しも持つ「欲求」。その欲求を大きく3つに分けたのです。

①自然で必要な欲求。(例:喉が渇いた時に飲みたいという欲求。)
②自然だが不必要な欲求。 (例:豪華な食事。)
③自然でも必要でもない欲求。 (例:名誉、栄光)

この内、満たすべきなのは、①自然で必要な欲求のみ。
その他のものは心の動揺を引き起こすだけだと説いたのです。

(便宜上、3つの欲求に数字を書きましたが、原文にはありません。)

エピクロスさんの言ってることは、シンプルでわかりやすいかと。
似たようなことを洋の東西を問わず、歴史上の人物、現在を生きる人も言っていると思います。でも、話を聞いたり、本を読んだ後に「あっ、そうそう。そういうことだったよねぇ。」と思い出せることが大事かなと。
その意味で、エピクロスさんの表現は覚えやすいと思いました。

~とは言うものの、たまにはちょっと贅沢な食事。いつもよりはおいしいデザート。人前で「それ 知ってるよ」「それ 食べたことあるよ!」と聞かれもしないのに、ついつい言いたくなってしまう。そんなこんなも全部ひっくるめての自分自身。でも気持ちのどっかでちゃんと軸足は「自然で必要な欲求」に置いてある。

これ、理想です。(笑)