第894回 「袖振り合うも多生の縁」

3月13日

これ、何の変哲もないただの缶コーヒーです。実は母親が月曜日の10時過ぎに、見ず知らずの小学生の男の子2人組から もらったものです。「知らない人から物はもらわないように」と、あれほど言ってあるのに。(笑)

母親が車庫前を掃除していた時です。
「これ(缶コーヒー)、間違って買ってしまったので、飲んでもらえませんか?」
「あら? ありがとう~ね。」 こんな具合だったようです。

「とても礼儀正しい子で、感じが良かったので つい もらってしまった」と言うのです。うちから100m程離れた所に自動販売機があるので、多分そこで買った物ではないかと思います。近所の子供かもしれませんが、団地の中でも通りが1本違うと全く知らないということもあるので 実際のところ どこから来た子かもわかりません。(笑)

本来なら平日のこういった時間帯に生徒がウロウロしていることはありませんが、コロナ騒動で休校になっているため、こんなこともあるんですね。

外出や店に行くことを控え、日常の行動範囲も自粛モードになりがちですが、生活品を買うスーパーへは行かないわけにもいかず…。
先週末、イオンに行った時のことです。専門店街で買い物をしてレジの列に並ぼうとした際に、私の斜め前に20代後半の男性が立っていました。「この人は、そこにたまたま立っているだけなのか? それとも レジに並んでいるのか?」どっちかわからなかったので、どうぞと手で前を示しました。

男性は笑顔で軽く会釈をして そのまま列に加わりましたので、自然な感じからすると、どうも最初から並んでいたみたい。気が付かなかったら、私は知らない内に割り込むことになっていました。

その後、レジを済ませ これから食品売り場に行って…と、次のことを考えながら通路を歩いていると、先程の男性が寄ってきて「これ、よかったら使いませんか?」とイオンの5%引きの券を渡してくれました。

男性いわく「(自分は)県外の人間で、(もう帰るため)使いませんので」とのことで、どうも私がレジを終えるのを待ってくれていたようです。ちょっとびっくりしましたが その気持ちが嬉しかったので、「あぁ… ありがとうございます」と頂きました。

「袖振り合うも多生の縁」を実感する出来事でした。

最後にもう一つ。3月の初め、冷たい雨がしとしと降る日のことでした。用事をすませ店を出て、駐車場に停めてある車まで約10m。濡れたくはないですが傘を差しての松葉杖となるとバランスが不安定になるのでめったなことでは差しません。

まぁちょっとの間しかたないか、と濡れて歩いていると「どこまで行かれますか?」と後ろから傘を差しかけてもらいました。びっくりしてふり返ると赤ちゃんをだっこしたお母さんだったので重ねてビックリ!赤ちゃんのことを考えると寒い外から一刻も早くお店に入るか、車に乗り込むかを優先したいはずなのに、見ず知らずの私に…。本当にありがたいことです。

心底 ビックリしたので、すぐに言葉が出ず、ヘンな間がありつつも、「ありがとうございます。あの車です~」と数m先にある車を指差しました。恐縮しながら、横並びになって歩いてもらいました。車に乗り込む際にも もちろんお礼を言いましたが、その後 エンジンをかけてからも「あの人、赤ちゃんをだっこしていたのに…。 スゴい良い人やったなぁ。」と頭の中がそればっかりでした。

サポートして頂いたこともありがたかったのですが、コロナ騒動でギスギスしたご時世に、こうした心温まる出逢いに気持ちが自然にほぐされたことでした。

第893回 「買い占めに走る心理」

3月7日

今回、初めてトイレットペーパー・パニックを経験なさった方は多いでしょう。2月末から、「生活必需品のトイレットペーパーが手に入らなくて、何店も回った」話があふれました。マスク不足を引き金に「トイレットペーパーもなくなる」というデマがSNSで広がり、新型コロナウイルス流行での社会不安が目に見える形となりました。

安倍首相も記者会見で「充分な供給量と在庫が確保されている」などと発表しましたが、マスコミで広くデマであると報道されても買い占めや高額転売は収まりませんでした。空っぽになった店の棚を撮した写真には「逆に不安を煽る。十分な在庫商品を撮すべきではないのか」という報道への指摘もありました。

やっと今週、少しずつ商品が手に入るようになったようです。昨夜はうちの近くのスーパーでも「お一人様1点まで」で、「夜になってもトイレットペーパーが7~8個残ってたから」と夫が1つ買ってきました。(私が買わなかったもので…)

こうしたパニックは、1973年のオイルショックでもありました。スーパーの店頭からトイレットペーパーが消え、主婦たちが商品を求めて殺到する光景を、私もニュースで覚えています。日用品の買い占めや争奪戦の殺気立った様子は、衝撃的でした。

当時は中東戦争による社会不安、それによる原油高騰という事実があり、政府が「紙の節約」を呼びかけたところ、一部のスーパーが「紙が売り切れるかもしれない」と煽ってトイレットペーパーを大量に販売したのをきっかけに、全国でパニックに陥ったのです。多くの消費者がトイレットペーパーの買い占めに走りました。

10年ほど前にネットで、当時のことが別の意味で忘れられない人を見かけました。「あれはもうかった!また、ああいうことがあればいいのに」というコメントです。消費者を手玉にとって!と、怒りを覚えたものでした。そのため今回 目の前に商品が出されていても、少しのストックしかなくても「ああいう輩を喜ばせてなるものか」との反骨心が、私が購入を踏みとどまる原動力になりました。(笑)

多分心理的には、コロナウイルスの脅威で不安やストレスを感じた多くの方が、それを解消するための代償行為として、買い占めに走ったのでしょう。目に見えず、いつまで続くかわからない不安を「お金を払って物を買う」ことで無意識に埋めようとするのですね。それで手っ取り早く心は満たされ、安心します。それは無理からぬことでしょう。

しかもトイレットペーパーは、確実に使える日用品で軽いし、いくつ買っても高くない。これがもしもお米なら、10kgの袋を2~3個も持てませんよね。

現代では、商品の流通にPOSシステムが使われています。スーパーなども在庫を持たず、レジでの商品の売り上げデータからニーズを予測し、すぐに業者から商品を納品してもらいます。そのため 1~2割の人が多く特定の商品を買っただけで、すぐ品切れになってしまうそうです。加えて断捨離などで、家に日用品のストックをできるだけ置かずシンプルな生活をする人も増えていますが、それは「商品はいつでも手に入る」という前提があってこそですよね。

だからこういうトラブルが起きてから教訓となるのは「いざという時のために、少しストックを持って日頃から回しておくことが安心につながる」という基本的なことでした。

心の安定を保つためには、不安な気持ちを解消し安心させることです。震災の後、「絆」という言葉があふれたように、ストレス解消にはふれあいがあると、幸せホルモンと言われるオキシトシンが分泌され、心が満たされます。そういう意味であいさつやコミュニケーション、ゲームなど家族や友人で笑い合える交流は大事ですね。

休校が続いて大変ではありますが、家で子どもをお世話している方々をはじめすべての方々と、この言葉をこれからの希望として共有できればと思います

幸運は、「不運な出来事の姿をして、やってくる。(田坂広志)

第892回 「光と陰~新型肺炎に思う」

3月1日

コロナウイルスで亡くなられた方々に 心からお悔やみ申し上げます。
現在闘病なさっている世界中の方々が、早く回復に向かわれますように。

「アメリカと、アフガニスタンの反政府勢力 タリバンが和平合意に署名した」という世界的ニュースよりも 新聞紙面で大きな見出しとなっているのは、新型コロナウイルス肺炎に関するニュースです。

安倍首相の突然の学校休校要請からの社会の大混乱。本来3月は観光シーズンの幕開け時期ですが、「土佐のおきゃく」などのイベントや、300年以上の歴史ある日曜市までもが軒並み中止へ。観光産業、イベント業への影響は深刻ですが、研修業も例外ではなく 3月は中止が相次いでいます。日本全体の経済への打撃は計り知れません。

高知でも2月29日に感染者が出たとの発表があり、報道も一気に緊迫してきました。見えないウイルスへの不安、おびえからどんどん日本の社会が混迷して来ているのを感じます。マスクの払底でトイレットペーパーもなくなるというデマから起きたトイレットペーパー騒動。高知でも例外ではなく、スーパーの棚からなくなっています。

トイレットペーパーの原料はマスクとはまったく違うし「在庫は潤沢にある」のに、そういうデマによって値段をつり上げ、荒稼ぎをしたい人がいるのでしょう。
さっき見ると、アマゾンでもマスク2000枚でなんと35万円!恥を知れ、と思います。こうした行き過ぎた行為には法的な規制が必要ではないでしょうか。

反面、「ハンカチをこう折って輪ゴムを付けるとマスクになりますよ」などと動画で紹介している優しい人たちもまた少なからずいることに、救われる思いです。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの感染予防で、「せきやくしゃみの症状がない人は、予防目的でマスクの着用をする必要はない」としました。予防はできないんですよね。マスクの供給不足に拍車をかけないため、過度の使用を控えるよう呼びかけたそうです。

確かに新型肺炎の治療薬はまだできていませんが、それは風邪だって同じことではないでしょうか。不必要にパニックを起こさないことが大事なように思います。

高知県の感染症対策の専門家、吉川清先生は、
「感染者の8割ほどが軽症なので、高齢者や糖尿病、心不全などがある人以外は、恐れすぎないように。咳エチケットを守り、外出後は20秒以上石けんで手洗いすること。感染した人を悪く言わないこと。十分な睡眠を取るなど、免疫力を下げないこと」と話されています。

今、心をどう平穏に持ちこたえていくのかが問われているように思います。
この不安感をどう拭えばいいのでしょうか?
最近読んだ田坂広志さんの「運気を磨く」に、そのヒントが書かれていました。

ある企業が取引先との間で深刻な問題が起き、みんなが「会社が吹っ飛ぶのではないか」との顔面蒼白の経営会議での、経営者の一言。

【「ああ、大変なことが起こったな!
  これは、下手をすると会社が吹っ飛ぶぞ。
  だがな、最初に言っておく。
  命取られるわけじゃないだろう!」

この一言で、居並ぶ幹部も、それまでの顔面蒼白の状態から、一瞬で何かをつかんだのであろう。一同、見事に腹が据わった。】

今回の新型コロナウイルス肺炎でも同じではないでしょうか。
デマに惑わされず、腹を据えて情報の真偽確認をし、自分にできることを堅実にコツコツとやっていくこと。

【我々の心の奥深くには、実は、我々自身の想像を超えた「強さ」が眠っている。
たしかに、日常の平穏な感覚に慣らされた人が、突如、深刻な問題や厳しい環境に直面して、この覚悟を定めることは、それほど容易ではないだろう。
 だが一方で、人間というものは、ぎりぎりまで追い詰められたとき、不思議なほど腹が据わることも事実である。そして、腹が据わったとき、やはり不思議なほど、「叡智」が下りてくる、「勇気」が湧き上がってくることも事実である。】

【命あるかぎり、人生の陰を、光に変えていくことができる。】

あなたは、人生の陰にとらわれ過ぎていないでしょうか?
人生の陰を、光に変えられるようでありたいものです。