第872回 3つの「まぁしょーがないか」の話。

10月11日                中村 覚

もう始めて10年以上になる講義が、この時期にあります。先週の金曜日にその第1回目が終了しました。次週の打ち合わせをすませ、外に出た時には既に辺りは薄暗くなっていました。

駐車場の車に行きドアを開けようと取っ手を握ると「にゅっ」と妙な感触があり、とっさに手を放すと足元にカメムシが落ちました。どうも取っ手の裏側に潜んでいたみたいです。圧死したわけではないでしょうに、カメムシは死んだふり。握った右手を嗅ごうものなら鼻の寿命が縮むってもんです。

「まぁしょーがないか。 取っ手の裏側にいたわけだし。」車に乗り込むと、密室に臭いが充満しています。

これは事故みたいなもので、とにかくしょーがない。どこの世界に、取っ手の裏側をいちいち確認する人がいるでしょうか? 事故以外に考えられません。 以前、半年の内に2度も一時停止違反で捕まり、次 違反したらアウト!という窮地に立たされましたが、あの時と同じです。

次の日です。講義中に受講生に書いてもらったレポートのご質問を、お答えするために種類別に分けてパソコンに打ち込みます。今年の質問の内容は 松葉杖をついて15年程になる私の日常生活についてがほとんどです。「どういった事に不便さを感じますか」ということを、受講生がそれぞれの言葉で書いてくれています。

そんな中、「難病を患っている中で、一番何が大変ですか?」というご質問がありました。講義の中で「足、腰に力が入りづらく松葉杖で~」と申し上げていますので、20代の元気いっぱいの世代からすれば、私は難病ということになるみたいです。しかし私の中では 自分以上に大変な状態にある方はいくらでもいらっしゃるので、自分で「難病」と言うのはおこがましいだろうと・・・。

しかし、おかしなもので そう言われれば、ちょっと立ち止まり 普段見慣れた景色(日常)を一度見直してみるかと、そんな空気が一瞬 流れます。他者から自分がどう見られているのか?解釈というのは自分と人様ではこんなにも違うものなのかと、今さらながら再確認です。 ~でも、「まぁしょーがないか。 人は人。自分は自分。」

たくさんの質問をどんどん打ち込みますから この質問が終われば 次の質問。「なんびょう」と打ち込み、変換キーを押すと「何秒」と表示され、パソコンにしてみれば使用頻度に従っただけでしょうが、「ふざけてるのか?」つい笑ってしまいました。 こんなふうに悩んでも仕方ないことは、ちょっとトボけてやり過ごそう、みたいな。(笑)

ところで、こういった大量の入力をする時は、だいたいイヤホンで音楽を聞きながら打ち込みます。その方が疲れにくい気がするからです。~で、しばらく前から イヤホンが壊れていたことを思い出し、外出先で打ち込みをしていたので、その足ですぐに買いに行きました。前回 使っていた物よりはちょっと良いヤツをと思い、買ったのがこちら。

ところが、あれ? あれ? いざ聴こうとしたらパソコンのイヤホン端子に差し込むプラグがありません!

左のイヤホンのように本来はプラグがあるはずなのですが・・・?

得体のしれないイヤホン。店に引き返し、プラグ付きのイヤホンに替えさせてもらえないかと聞くと「こちらの商品はワイヤレスイヤホンと明記されていますし、なによりも一度開封した商品は返品不可です。」

いや、ごもっとも! スマホ対応のイヤホンだったみたいです。(スマホは持っていません。) 妙に聞こえるかもしれませんが、購入する時にはパッケージの側面にデカデカと書いてある「ワイヤレスイヤホン」が見えていなかったのです。

買った後に浮き出たのでしょう。だとしても、やっぱり開封したのが一番の痛手。浦島太郎も玉手箱を開けてなければ返品できたはず。(笑)

「まぁしょーがないか。 開けたんだから。」

2日間の内に起こった、3つの「まぁしょーがないか」の話でした。