第930回 「マスクと表情、その影響」

11月21日

「えぇ~!ここまで笑わないと、わからないの!?」
看護学校でマスクを付けたまま、真顔から笑顔に変えるワークをしたときの学生達の反応です。マスクの下で、大きく口を開けた満面の笑顔になって初めて、友人が「笑顔に見える」と認定したことに みんなショックを受けていました。

マスクの下が満面の笑顔の手前でも 相手が「笑顔」だと認識してもらえた人は、90人中わずか3~4人。大笑いレベルの笑顔でないと、笑顔には見えなかったのです。笑顔についての認識が自分と他人からでは大きく違うのだと、腑に落ちたようでした。

顔の中で一番大きく動くパーツが口です。だからこそ、口元を隠されると相手の表情が見え辛く、感情を読み取るコミュニケーションが取りにくくなるのですよね。

11月12日のNHKの朝のニュース「おはよう日本」でも、特集でマスク生活での子ども達への負の影響について取り上げられていました。

保育士が子ども達に「良かったね」「えらかったね」と声かけをしても、意志が伝わらない。じーっとは見ているがマスクでこちらの口元が見えないので、すぐに反応が返らない、共感が感じにくいというのです。これでは信頼関係が築きにくいので、顔が見えるフェイスシールドに替えてコミュニケーションを取っている、と。

ヒトの脳と心の発達の研究者 京都大学・明和政子教授によると、生まれてから1歳までの赤ちゃんは特に、接し方に注意が必要だそうです。

喜怒哀楽の「顔」を学ぶ赤ちゃんは、色々な人の顔やその動きを見て表情を学ぶわけで、目・鼻・口の3点がそろって「これは顔だ」という認識がされるそうです。その後数ヶ月かけて喜怒哀楽の顔を学習していくのだとか。

すると、感染を恐れるあまり家族がずっとマスクをしていると その学びができずに、「顔」の認識が阻害されることにならないでしょうか?

明和教授によると「顔と表情を区別する能力が土台にあり、その上に相手の気持ちを理解する能力が育っていく」ということでした。顔の認識ができないと共感力に影響が出る、しかもそれがわかるのは何年も経ってからで、その教育の大変さを考えると、多くの親ごさんに知って頂きたい大切なことだと感じました。

小学校でもマスクをしているため、友達同士で顔を向き合い学んだり 助け合いができなくなり、トラブルなどコミュニケーションに苦労する場面が増えていると報じられていました。

私は昔演劇をやっていたこともあり、たまに中村から「筒井さん、そのリアクション、外国人みたいですよ」と注意か賞賛かわからない指摘を受けるのですが(笑)、感情をジェスチャーやボディランゲージなどで豊かに伝えることは、今こそ大事ですね。
自信を持って、精進します!(笑)