第1128回 「おかげさま」
10月12日 中村 覚
前方から車が来ればほぼアウトな狭い山道ですが、ここで行き違いになったことはありません。初めてこの山に来たのは10年程前です。今まで数えるほどしか来ていませんが、今回も大丈夫なはずです。
ところが、アスファルトの道の両サイドが経年劣化のためか、前回来た時(去年)よりも数センチ削げ落ちているような気がします。でも車幅は確保できているので大丈夫かと。内心、もうここに来るのも今年で最後かぁと。劣化でこれ以上道幅が狭くなると…。頂からの眺めが良かったのに。(写真はイメージです)
右側は谷なので、なるべく左の山側に寄りながらゆっくりと走行します。と言ってもアスファルトが削げ落ちていますので、完全に左寄りというよりは、気持ち左寄りの運転です。緊張しないわけではないですが、初めての道ではないし土地勘もあるし。それにもう少し行けば ちょっとした広場があるので、これ以上 危なそうなら、Uターンして帰ろうと。
ところが、次の瞬間です。登り坂を走行中のエンジン音にも負けない「プシューッ!」という高い音。パンクです!パンクしたことはないのに、パンクとわかるこの音。映画並みに本当にこんな音がするんですね。実際にはもうちょっと地味な音と思っていました。
パンクしたのは左前のタイヤ。どうも山肌から突き出ていた岩の角でタイヤの側面をザックリ。今度から危なくても道の真ん中を走らなければと。パンクしたタイヤはズルッとあらぬ方向に滑るのではないかという心配もしながら~(実際にはそういう感触はなかった気がしますが、それは結果論ですので)
広場で即、Uターンして麓の登り口まで戻らなくては。
ロードサービスの牽引車に来てもらうのに、ここにいては話になりません。
ガタゴト、ガタゴトと音を立て妙な方向にタイヤがズルッとなるのではないかと心配しながら、5分程で登り口まで戻ってきて とりあえずの一安心。
それからロードサービスに電話です。
ロードサービスの方から居場所を聞かれた際、正確な地名がわかりません。いつもの生活道の延長であれば説明も早いのですが。
こんな時は電柱に地名が書いてあるので、電柱を確認すること!以前テレビでそう言っていたのを思い出し、そばの電柱を確認すると確かにプレートが貼り付けてありました。(写真はこの時のものではなく、後日 撮った一例です)
電柱に書いてあった住所を伝えると、次に聞かれたのが「周りに目印になるような建物はありませんか?」より正確に所在地を把握するためだと思うのですが、「周りは田んぼと畑です。民家はたくさんありますけど…。」自分でももう少し言いようがないかと思うものの、事実なので仕方ありません。
その後、ちゃんと牽引車が30分程で来てくれました。待っている間に近くのガソリンスタンドに連絡して、自分の車に合うタイヤの在庫も確認していたので、スタンドまで牽引してもらい無事に修理してもらうことができました。
牽引車の方に伺ったのですが、狭く長い道の果てに身動きが取れなくなった車を助けに行く時は、牽引車も現場でのUターンはできません。ですので、バックで現場に向かうそうです。「20~30分、狭い道をずっとバックで行ったこともありますよ」と。話してもらわないと考えたこともありませんでした。こういった話をお聞きすると、身に沁みます。
ロードサービス、牽引車、ガソリンスタンドの方々、そして電柱。色んな方々のおかげで、90分弱でいつもの暮らしにもどることができました。みなさんのおかげさまです。