第721回 「東京駅:工事中 後編」

11月4日

前回に引き続き、東京駅についてのコラムです。

東京駅は1914年(大正3年)年に完成した、建築家辰野金吾の代表的な作品です。2014年に開業100周年を迎えた、国の重要文化財でもあります。現在の駅舎は、2007年から5年半かけて復元されたものです。

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残念ながら工事中で、せっかくの美しい建築がパネルやフェンスで見え辛かったのですが、一箇所だけよく見える場所がありました。それがこちら。

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東京駅の中央、中央切妻御車寄せと呼ばれる部分です。パネルが途切れたこの前で、外国人観光客も含めた皆さんが 入れ替わり立ち替わり記念写真を撮っていました。

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それにしても、この赤いレンガと白い大理石のコントラスト、実に鮮やかです。細やかな飾り部分まで手を抜いていない。大正時代の職人魂が具現化したものと言ってもいいのではないでしょうか。

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ここには飽きずに眺めていたくなる、近代建築の様式美があります。

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残念だったのは、北口ドーム内にあるステーションギャラリーが定休日で見られなかったことです。もう少し、建築当時の雰囲気を味わいたい。そこで、南ドーム2階、東京ステーションホテル内にある「トラヤトウキョウ」に行ってみました。

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オシャレな店内の壁は、開業当時のレンガ壁をそのまま残してある、落ち着いたたたずまいです。

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「ベジプレート」(1188円)なる、やはりオシャレな一品を注文。色々な野菜を盛り合わせた ヘルシーで見た目もさすが、と思わせるものでした。

しかし食してみると評価は一変。何か、変な味…。新鮮そうな野菜がおいしくないって、初体験でした。生姜やクミンなどの香辛料を効かせているらしいのですが、味付けが野菜本来の味を損なっていて、残念。高知でおいしい野菜を食べ慣れているせいでしょうか?

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このままの印象だとあまりに残念なので、トラヤのメインである羊羹「夜の梅と季節の羊羹」(540円)と煎茶(+432円)のセットを注文。こちらは安定した期待通りの味でほっと一息でした。

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しかしこちらのお店の強みは、唯一無二のこのレンガ壁。大正3年(1914)の創建時から残るものを間近で、お茶を楽しみながら見られるのは実に嬉しいことです。

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黒い木(もく)煉瓦は、昭和20年(1945)の空襲で焼け炭化したものだそうです。本当に、歴史が刻まれていることを実感しました。

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外に出ると、もう暗くなっていました。
タクシーに乗って、宿を取った学士会館へと向かいます。電車だと東京駅からは かなり歩かなきゃいけないんですが、タクシーだと千円くらいなので助かります。

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ふり返ると夜の東京駅は、また美しい別の顔をしていました。

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ほの暗さで陰影が際立ち、近代建築の美しさが立体的に迫ってきます。
東京駅のミステリアスな夜の顔もまた、魅力的でした。