第1218回「謎解きエレベーター」
7月11日
「Alamak! あらま!マレーシア④ 」 written by Tapir
マレーシアではエレベーターの階数表示がややこしい。
これはイギリス統治が長かったため、その影響が色濃く残っているからである。
例えば日本では1階→2階→3階となるが、
マレーシアの場合はG階(Ground Floor)が1階となる。
したがって階数の順番は、G階→1階→2階→3階。
つまりG階の上が1階となるワケで基本、「各階にG階をプラスしたものが階数となる」のである。したがって1階は「G階+ 1階=2階」のことである。
(ここ、重要なのでメモを取っていただきたい。)
ところが、このG階がクセモノで、
LG:Lower Ground(地上より少し下)
G:Ground Floor(日本でいう1階に近い)
UG:Upper Ground (1F に続く階)
と3種類の「G階」で示されることが多い。(大型モールや高層コンドミニアムではたいていコレ)G階の種類が増えるにつれ、ますますどこが1階なのかわからなくなり混乱の極みとなる。
加えて建物によってはM階と言う Floorがあったりする。M階とは上下階の間の階、Middle Floorのこと。2階と3階の間にあるFloorであれば2M で表示される…ややこしい。
(はい、ここでアタマの中を一度整理しましょう。)
さらに中華系マレーシア人は4という数字を嫌うため一般的に4階は3Aと表示される。
13A 23A 33Aはそれぞれ14階 24階 34階のことである。
ここまでご理解いただけたであろうか?
理解も何も、ちょっと考えたらわかることを大袈裟に言うな💢
と、思ったそこのあなた。
油断していると、更にややこしいFloorが刺客のごとく手ぐすね引いて待ち構えているのだよ!
その代表的Floorが3AM、13AM、23AM…などなど。
例えば3AMとは中4階Floorである。(はい、復習。13AM、23AMはどこか考えましょう。)
おそらく日本の感覚で、この階に来るとワープしたかのような錯覚に陥り、
「アレ?3階じゃないの?え?4階でもないの?じゃあここはどこ?」
と、頭の中でハテナマークを量産しつつ徘徊することになる。
そう、マレーシアではこの複雑怪奇な階数表示を理解していなければ、目的のFloorを探してエレベーターを昇ったり降りたりすることになる。やがて気がつけばムーミン谷のスナフキンの如く、Floor探しの旅人となって彷徨ってしまうハズである。
従って、レセプションで「14階Middle Floorです」と言われると、多くの日本人は「エレベーターの階数表示はどれを押せば良いのだ???」となる。
(お分かりいただけたであろうか?正解の階数表示は13AMなのだよ。)
さてこの奇妙奇天烈な階数表示問題とエレベーターのセキュリティシステムが組み合わさるとどうなるか?
ズバリ、悲劇がおこるのである。
今回、この悲劇の舞台となったのが我が家のコンドミニアムである。
我が家のコンドミニアムはTower1とTower2で構成されている。各Towerの入り口はそれぞれ別であるが、3M(中4階)3A(4階)33A(34階)そして35階の共有施設階部分はブリッジで繋がっており、Tower1とTower2を行き来できる構造となっている。(よりによって階数表示のわかりにくいFloorが共有施設階💢)
コンドミニアムのエレベーター使用にはセキュリティ上、エレベーターカードが必要である。これを階数表示プレートにタッチすることでエレベーターが作動する。エレベーターカードが作動できる階は住居階と共有施設階のみである。ところがこのカード、住居Towerのエレベーターにしか使えない。
例えば、Tower1のエレベーターならTower1のエレベーターカードしか使えない。それを忘れて共有施設階のブリッジを行き来しているうちに、ついうっかり間違ってTower2のエレベーターに乗ってしまうと階数表示プレートにタッチすれどもエレベーターは停止する。自動的に監禁されるワケである。
たいてい、やらかした者は「階数の押し間違いか?」と困惑しながら、「4階って階数表示は3だった?(違うだろ3Aだろ!)それとも3AMだっけ?(それは4階MiddleFloorだろ!)」と当てずっぽうで次々ボタンを押してみることになる。しかし動かぬエレベーター。(エレベーターカードが違うんだから動かないんだよ!)
やがて時間経過と共にエレベーターが脱出不可能な四角い密室となっていることに気づく。閉所恐怖症の者にはトラウマ級の事態である。そうなると心理的に追い詰められ、心拍数は増加し判断力は低下する。この反比例は恐怖を呼び覚まし、エマージェンシーコールボタンの連打と「Help me!」の絶叫に直結する。するとセキュリティスタッフやらオフィススタッフは何事か?とばかりにワラワラと集まり、大騒ぎの中で密室エレベーターからおバカな利用者を救出することとなる。おバカな利用者は自ら招いたエレベーター監禁事件で、赤っ恥をかく結果となってしまうワケである。
…この、「おバカな利用者」とは何を隠そう、この私のことである。
皆様、その節は誠に申し訳ありませんでした💦
先日も監禁の犠牲者が出た。
エレベーターに乗るとそこには軽トラくらいありそうな巨体の男性が、捨てられた子猫のような濡れた瞳で私を見つめ、階数表示を指さしながら
「Help me!!!」
やらかしたんだな?今まで箱詰め状態だったんだな?
このエレベーターはTower1専用エレベーター。うっかりTower2のエレベーターカードでTower1のエレベーターに乗っちまったんだな?
事情はわかった!何も言うな!安心しろ!
無言で頷くわたくし。
エレベーターでG階まで降りて男性をTower2エントランスまで送り一件落着。
「Thank you!」
何度も振り返り手を振る男性。
それはまるで、捕らえられたトドが海に逃がしてくれた自然保護団体のオバちゃんに感謝と別れの挨拶をするかのようだった。(失礼な事をいうな!)
これやこの
行くも帰るも分からぬは
知るも知らぬも階数の謎💢
蝉丸(嘘)
追記: 我が家のエレベーター、元は4基の設計だったが途中で計画変更があり5基になった。1基、後付けで竣工されたのだ。
この後付けエレベーターはなぜか時々休止していることがあった。
その謎が解けたのは、ある大雨の日。
いつも通りにエレベーターに乗るとポタポタと天井から雫が…。
え?何で?と思う間もなく突然結界が破られたかの如く雨がドドドッ。
え、待てよ!ここエレベーターの中だろ?すると今度は壁を伝って流れる水。壁は完全に滝と化す。ひ、ひえー!
エレベーター内の水嵩は増すばかり!!!
アクション映画にこんなシーンはなかったか?
ジタバタしているうちに何とかドアが開いて無事脱出できたが、まさかエレベーターの中で滝行するとは…。
我が身に浴びた世俗の汚れも、滝行で少しは清められたであろうか?
…て、そんな問題じゃないわ!
死ぬとこだったわ!
欠陥エレベーターの修理のために度々休止していたワケである!!!
エレベーターには十分注意していただきたい。


