第1231回「梼原の楽しみ方~雲の上の図書館①」
10月10日
梼原の山に向かう道を走っていると、空気の質が少しずつ澄んでいくのがわかります。標高が上がるにつれ、胸の奥がふっと軽くなる感じ。その静かな高揚感のまま、私は研修のために「雲の上の図書館」へ向かっていました。
旧梼原小学校跡地に立つその建物を初めて目にした瞬間、思わず見入ってしまいました。
日本一、本が似合う人──二宮金次郎像が、
まるでこの図書館を見守っているように佇んでいます。
高知市から車で1時間半ほどの梼原町にある、「雲の上の図書館」。
背景には、緑豊かな山々。標高は約400m。「雲の上」という名のとおり、空気が澄み、光が柔らかい。深呼吸すると、体の奥まで森の香りが届くようでした。
玄関で靴を脱ぎ、布スリッパで「お邪魔します」と上がると、
そこはまるで木の温度で満たされた森の中。
梼原町産のスギやヒノキがふんだんに使われ、
右側の全面ガラス窓からは、山の光が静かに差し込んできます。
1階、中2階、2階へと続く長い本棚と階段。
まるで本が呼吸している迷宮のようで、歩くにつれ心がほどけていく感じがしました。
この図書館は、梼原町と縁の深い建築家・隈研吾さんが設計し、2018年に完成。
2022年には『図書館建築賞』を受賞しています。
報道で見ていたときよりもずっと、建物そのものが“やさしい”のです。
「町のリビングのような読書空間にしたかった」という隈さんの言葉が、空間の隅々に息づいているようでした。
棚田のように段々になったスペースは、コンサート時には舞台に早変わりするそうです。木の段差に腰を下ろすと、まるで山の斜面に座っているような安心感がありました。
そして圧巻なのが、長い本棚「ゆすはら“いろは”ウォール」。
梼原の郷土資料から高知・四国へ、さらに日本文化へとつながる本が並び、まるで一滴の水が大河になるように、知が広がっていきます。
お母さんに抱っこされたお子さんは、この贅沢な知の空間で育つのですねぇ。なんともうらやましい気持ちになります。
あちこちに椅子が置いてあり、思い思いにゆったりと読書を楽しめるようになっています。
ここは梼原町だけでなく、高知県・愛媛県の住民も利用できるそうです。
観光客は館内閲覧のみですが、散策するだけでも充分に心が満たされます。
2階から見下ろすと、木の香りと光が混ざり合うような景色が広がり、その静けさの光景にしばらく立ち尽くしてしまいました。
続き部屋のライブラリーには「さ」の棚が目立ち、
コミュニケーションラウンジには「ゆ」「め」の文字。
一体どういうことなんだろう──と興味が湧いてきます。
実はこの図書館、分類がとてもユニークなのです。
本棚の見出しには「家事」「片付け・そうじ」「少ないもので暮らす」「家を建てる」など、つい読みたくなるような言葉が並んでいます。
雲の上の図書館は、五十音順ではなく、日本らしい『いろは』48文字にテーマを割り当てて分類しているのです。
「い=梼原の風土」
「ろ=高知・四国の歴史文化」
というように、文字そのものが棚のテーマになっている…地域性・物語性・偶然の出会いを重視した棚づくりですね。歩くほどに、分類が“身体で理解できる仕組み”になっているのがわかります。
試しに『追手前伝説』を検索してみると、
「ゆすはら“いろは”ウォール-は-3-3」と表示されました。
なんと光栄な!
探しに行くと、確かにそこにありました。
思いがけない出会いに、思わず笑ってしまいました。
図書館前の芝生広場では、こども園の運動会の準備が進んでいました。
町民みんなで子どもの成長を見守る──そんな温かい空気が漂っています。
1階とコミュニケーションラウンジは会話も飲食も自由。
「◯◯禁止」の貼り紙をなるべくしない空間づくりを目指しているそうで、そのおかげか、誰もがのびのびと過ごしていました。
私は研修前に3時間ほどここで過ごしましたが、思いがけず没入してしまい…時間を忘れるほどの楽しさを実感しました。
それで、1階多目的ホールでの「福祉接遇の基本」研修の様子は……
なんてことでしょう、すっかり撮影を忘れていました(笑)
そして実はこの図書館、“図書館らしくないある工夫”もあるのです。
3回に分けて、ご紹介していきますね。




















