第1232回「梼原の楽しみ方~雲の上の図書館②」

10月18日

さて、前回に続き「雲の上の図書館」をお楽しみ下さい。

本の分類方法が「いろは48文字」にテーマ設定されていることをご紹介しましたが、それを視覚的にも楽しめる工夫がされています。それがこちら。

図書館の5カ所に海洋堂によるジオラマがあり、それぞれの棚のテーマに沿った世界観が広がっています。なぜ海洋堂かというと、ここから車で1時間ほどのところの四万十町に「海洋堂ホビー館四万十」があるからでしょう。日本のフィギュア文化を創出した海洋堂の技と、本のコラボを楽しめるわけですね。今回はこれらのジオラマを、たっぷりどうぞ♪

まずは、ゆすはら“いろは”ウォールの「は」の辺りです。

小さな子どもの目線の高さに広がる「海洋堂ジオラマ01 ゆすはら“いろは”ウォール」
書かれていた、説明文です。

「梼原の森や棚田などの自然に、様々な生き物。神楽が奉納される神社から祖先を敬うお墓まで、梼原の伝統文化と風力発電の風車、四国カルストの牧場、隈研吾さん設計の役場など、梼原の今が隣り合っています。そこに昔話でおなじみの竜の迫力ある姿が重なることで、梼原の今と昔をつなぎ、未来へと立ちのぼる梼原の勢いを表しています。」

雲海を突き抜ける大きな頭と牙。この龍、すごい迫力です!
よーく見てみると、この角には小さな芽が芽吹いていて、自然と融合しているのだとわかります。龍は、自然の精霊なのですね。

右半分は反射でよく写らなかったので、左半分をご覧ください。
山の上の風車、隈研吾さん設計の梼原町役場や幕末の志士たちの群像「維新の門」などが再現されています。時を超えた、梼原らしさが見える風景です。

役場の木造建築や「維新の門」の群像の雰囲気、再現度には感心します!

海洋堂のジオラマは梼原町の歴史・風土・生活文化を、文字や写真ではない“立体の物語”として、空間で見せているのですね。

さて次のジオラマを探しに、2階のライブラリー1から4の続き部屋に行ってみましょう。
まずはライブラリー1へ。「自然のすがた~宇宙の謎と生命の進化」というタイトルです。

「う」の棚があって、テーマは「宇宙/地球/生命/進化」。本棚の間に突然ジオラマが現れます。

「海洋堂ジオラマ02 自然のすがた ~宇宙の謎と生命の進化」です。

「宇宙に飛び出した人類が目にする光景として表現された。生命進化と生物多様性の渦巻き。カンブリア紀の進化の大爆発で登場した。オバビニヤやアノマロカリスなどのユニークな生物たちの姿は、海洋堂が得意とする生物フィギュアシリーズの真骨頂。」

子どもがジオラマに引き寄せられ、そこから本へ視線が流れる。ジオラマの下には、子どもの「宇宙」「動物」といった図鑑も見えます。まさに「偶然の出会いを生むための棚構成」ですね。

では、次の部屋ライブラリー2へ行きましょう。

「海洋堂ジオラマ03 歴史のながれ ~人類の英知と葛藤」

「このジオラマはエジプトの王のマスクから産業革命の蒸気機関まで。望遠鏡の発見からロケットによる宇宙技術まで、さまざまな人類の成果を展示する架空の博物館です。各フロアの柱が、それぞれの時代を象徴しているのに注目。この細やかさが、海洋堂の魅力。」

海洋堂の得意分野でもある、美術品のフィギュア(下の段)が目を引きます。一番上の段が本棚(図書館?)って、いかにもここにふさわしい感じですね。ジオラマの周囲の本棚には、世界の歴史や文明の本が並んでいます。

では、ライブラリー3に行きましょう。

「海洋堂ジオラマ04 創造のかたち ~美術の目、芸術の技」

「このジオラマは、架空のアーティストの机の上を表現しています。絵の具からカッターマットまで、デザインやアート作品の製作に使用する道具類にイメージを喚起する。写真や浮世絵、仏像などが並んでいます。よく見ると、次々とイメージが形になっていく様子がわかります。」

海洋堂の得意分野の仏像、未確認動物などが並んでいますね。おっと、右上は幻のフィギュア「人形の国のアリス」ではありませんか!

では、最後のジオラマへ。

「海洋堂ジオラマ05 未来のおもい ~我々は何処に向かうのか?」

「このジオラマは、梼原にゆかりの日本の未来を開いた坂本龍馬像や、高度成長期の日本人の夢と未来を喚起した大阪万博の太陽の塔が象徴的に立ち上がっています。ロボット工場で次々と生産されたロボットが活躍し、未来の家の中での生活の様子も垣間見ることができます。」

このジオラマの周囲の本棚には「ノスタルジー」「特撮の夢」などの目次があり、右には「ゴジラ」のタイトルの本が散見されます。懐かしい、昭和の時代の象徴とも言えるでしょう。ジオラマを見ている内に時間を忘れ、その世界にどっぷりと浸ってしまいました。

こうしてジオラマを見て回ると、とても自然に本棚になじんでいます。
海洋堂の造形は単なる模型ではなく、職人の技術・地域の物語・文化の厚みを象徴するもので、梼原町の住民にとっては自分たちの文化が“作品として認められ”、“地域の物語が世界に向けて発信され”、子どもたちが“自分の町の物語を誇れる”という心理的価値を生みます。

これは、地域文化の持続にとって非常に大きいものだと思います。

海洋堂のジオラマは、地域の記憶を、建築と分類のあいだにそっと置く「立体の物語」なのですね。つい何度も立ち止まり、足を止めて見入ってしまいます。
もちろんそれは、海洋堂とこちらのスタッフの皆さんの「熱い思い」があってこそだと伝わってきました。

さて。「雲の上の図書館」は、2回では語りきれないとわかりました(笑)
この図書館は訪れるたびに新しい物語を見せてくれるので、この一月で3回も足を運んでしまいました。

コラムは、あともう1回お付き合い頂けますよう、どうぞよろしくお願いいたします。