第790回 「苦手な空間認識」

3月10日

私も、いわゆる方向音痴かもしれません。店に入ってから出る時に「あれ、右だったっけ?左?」とか間違うことはよくあります。でも歩き出してすぐに「あ、やっぱり違う」とわかれば、特に差し障りがあるわけではありません。

で、うちのスタッフの中村はもっと上級者で、空間認識が苦手なんです。これに気づくまで、何年もかかりました。運転を任せるようになって、いつもの会場に向かってもらうのに「どっちの方角でしたっけ?」なんてことはしょっちゅうです。初めの頃は「ちゃんと事前に地図をチェックしておいて」とか言ったのですが、それでもわからない。

ある時、いつもの文房具屋さんに行ってと買い物を頼んだのですが、電話がかかってきて「筒井さん、お店がないんです…。」
は?先日行ったばかりなのに、そんなことないでしょう?
どうも、行き方が違うとお店が神出鬼没になるらしくて。(笑)
最初の頃はそれが原因で、気まずくなったりしたものです。

運転自体はうまいんですよ。でも本人曰く「慣れない道を走っている時、急に助手席から『次を右折』と言われると『右折? 右折って、右のこと? あれ?』と困惑してしまいます。普段、歩いている時は右、左がちゃんとわかるのに 運転中になると判断があやしくなるんです。」

ナビを使えばいい?おっしゃる通りかもしれません。県外に出る時には使うんですが、日常よく使う場所をすべて設定するのもうるさいということで、日頃はあまり使わないんです。

ある時、天啓のようにひらめきました。もしかしたら中村は、脳の空間認識部分に、エラーがあるのかもしれないと。失礼かもしれないけどとそう口にすると、怒るかと思いきや、にっこりと笑って「やっとわかってくれたんですね!」。とてもスッキリし、嬉しかったそうです。

それからは対応の仕方が変わりました。空間認識が苦手なのなら、普通よりもわかりやすいように言えばいいだけですからね。「もうすぐ左車線に入らないといけないよ」「で、そこを左ね」。

ある日 車に同乗した私の友人は、「なんて口やかましい上司なの?中村くんも大変だね」と同情してたのですが、朝通った道を彼が「この道は、初めて通ります」と言ったため、私が意地悪で言ってるんじゃないとわかってくれたようです。(笑)

「運動が苦手」「経理が苦手」「話すのが苦手」…人は誰しも苦手なことがあります。でも、それを認識して対処をすればどうってことない場合も多いわけです。
先日のR1グランプリでピン芸人No.1になった、ほぼ全盲の濱田祐太郎さんは 見るのが苦手。でも、話の達者ぶりは素晴らしくて、私もファンになりました。

苦手なものはあっても当然!
対応を変えて人生を乗り切っていきましょう。(笑)