第861回 「ばね指」

7月26日              中村 覚

「ばね指」というのをご存知でしょうか。写真の薬指のように関節が曲がった状態から動かなくなる症状です。一定の角度までは曲げることはできますが、それ以上は痛いので曲げることができません。つまり げんこつを握ることができないんです。何かの拍子に物をつかもうとした時、「つかめない」のと「痛い」のダブルで不便です。

そして元のフラットな状態(指が伸びた状態)に戻すにも自力ではなかなか難しく、片方の手でリハビリをするようにゆっくりと伸ばしてやる必要があります。この時にも痛みを伴い、それが日を追う毎にだんだんひどくなってきたので とうとう病院へ行かなくては。(なるべくなら行きたくないのですが、痛みにはかないません。)

まずは、受付けをすませ問診票に記入です。その後 看護師さんに症状を詳しく聞かれ、「指が(一定以上)曲がらなくなって、元に戻すにも痛くて痛くて・・・」と目の前で実演。

「(症状は)どれくらい前からですか?」 「1ヶ月ぐらいです。」「なるほど。~で、何が原因で?」と聞かれ、(本当は言いたくなかったので)ちょっと間を置いてから「自分でやりました。」

と言うのも、 昔ヨガを習っている時に、指を1本ずつ 写真のように反らすということをやっていました。手軽で簡単ということもあり、ヨガを止めてからも思い出してはちょくちょく、もう15年になります。1ヶ月程前、映画を観ている時です。手持ちぶさたにまかせ、画面を見ながら いつものように指を反らし始めました。ゆっくり1本ずつ無理なく。右手の5本が終われば左手に移り、また右手に戻りまた左手へと、それはそれは本当に丁寧なことでした。

どの部位もそうだと思いますが、徐々にほぐしてやれば関節の可動域は広がりますので、途中から(可動域の)限界ってどのあたりかなと いつもよりちょっと弾んだんですね。気分も良くなり、痛みなどあるはずもありません。指の関節部分から精神高揚剤でも出ているのではないかと思えるほどに、かなり反っていたと思います。この頃には映画よりもこっちの方が面白くなっていましたが、この日は何事もなく終わりました。

それから3日ほどして右手の薬指の動きに違和感が出て それから数日後、痛みも出始めた頃 薬指が「もう無理です。限界です。」

「どうした? 一体 何があった!」日数にひらきがあったため、すぐには原因がわからず、後になってから「映画を観ながら念入りに反らしている時に、無理なら無理となんで言わなかった?あの時は文句一つ言わなかったじゃないか!」

ほとんど動かない痛む薬指を見ながら
「…自分で やったかあぁ。」
説明を聞いた看護師さんも笑顔でニッコリ。

いよいよ 先生の診察が始まり とりあえずレントゲン。パシャリと2枚。骨には異常なし。セーフ! 治療にステロイド入りの注射。これがアウト!手の平への注射は医療の禁じ手ではないかと思える程の激痛。 1回打って症状が改善しなければ3回、4回と1ヶ月毎に数回打つのが基本とのこと。それでも治らない時は切る。 指の腱の動きを邪魔している炎症部分をスパッとすっきり。

切られても良い! その方がマシだと思えてくるのは 注射の副作用。(笑)

注射をしてからそろそろ半月が経ちます。痛みは半分ほどになりましたが、まだまだ、しっかり握ることができません。
「体は無理が効かない」と言いますが、その時は何も言わず 後になって無理だと言うのですから 扱いづらいです。

これを考えると、生活や仕事面ですぐに愚痴や弱音を吐くことは、「現状を好ましく思っていない」とちゃんと信号を出しているようなものですから、こっちの方が後々大事に至らずにすむようにも思うのですが…。どっちもどっちでしょうか。(笑)