第981回 「それぞれの時に思いをはせて①」~中村時計博物館

11月19日

南国市後免(ごめん)町に、私設の時計博物館があります。
なんと 3千個ものゼンマイ時計が見られる、「中村時計博物館」です。

平成10年に中村昭弘さんが、町の活性化と時計店の存続をかけて時計店を建て替え、2階に「時計博物館」を設けたそうです。柱時計がある外観からも、時計への深い思いが伝わってきます。

店舗を入って右の階段が、時計博物館への入り口です。入館料は300円。

階段を上がると、四方に様々な時計があります。掛け時計、置き時計、懐中時計、グランドファーザー・クロック…。静かな中、コチコチという時を刻む音だけが響きます。すべてが、整備・調整されているそうです。

「据え置きのものをクロック、身につけるものをウォッチと言います。」なるほど、それは知りませんでした。

ご長男で中村時計店 野市店店長の中村文昭さんがご案内下さいました。とても物腰が柔らかく穏やかな方です。こちらは、おじいさまから三代続く時計屋さんなのだそうです。貴重なものばかりでしたが、ご案内頂いた中で一番心に響いたものからご紹介しますね。

これは、大正時代の精工社(現在のセイコー)の掛け時計。1m20cmはあるでしょうか。昔の土佐一宮駅の駅舎にかけられていた時計のようで、もう120年は経っているそうです。まだ海外から設計図を入手してその図面通りに作り、製品化していた時代の時計だそうです。

「土佐一宮駅が今の駅舎に建て替わる時、駅の近くにある おうどん屋さんに引き取られ。軒先にかけてありました。僕が高校の時 自転車通学だったので、そこを『古い時計があるなぁ』と思いながら通っていたんです。父に話すと見に行って、止まっているのを譲って頂きました。」

「中の機械はオーバーホールして、動くように修理をしました。
当時の技術なので、時計の木枠は全部 当時の職人さんの手彫りです。」

伺っているとなんだか、胸がジンとしました。この時計はここに来られて、本当に運が良かった。今は第三の人生を過ごしているのですね。
それぞれの時計が、人知れずこうした物語を持っているのでしょう。

これは1900年頃(明治後期)の、バイオリン型の掛け時計。日本のものですが、製造会社は不明です。流麗な曲線が、とても優美ですね。長針・短針のデザインも凝っています。黒の漆がバイオリンを連想させ、音色がよく響きます。

これは、世界の各都市の時差を表した時計。「東京」「伯林(ベルリン)」「倫敦(ロンドン)」「巴里(パリ)」はまだしも、「彼得堡」(ペトログラード)に至っては、??…まるでクイズです。(笑)ソ連時代は「レニングラード」と言われ、現在は「サンクトペテルブルク」となっているロシアの都市です。

アメリカ、アンソニア社の『涙の雫(しずく)」。明治初期のものです。上から両脇に垂れ下がった部分が涙の雫に見えることからつけられた名前で、柔らかな曲線が印象的です。実用品と言うより、調度品ですね。

右側の3つの掛け時計はイギリス製で、1950年頃のもの。クルミ材を使った優雅なスタイルは、ヨーロッパならではだそうです。楽器と同じ材質を使うことで、音の響きが良くなると教えて頂きました。ドイツのクロック産業の伝統は有名だそうですが、イギリス・フランスも掛け時計・置き時計は古い歴史があるのだとか。

文字盤も興味深いものです。時計の初期はローマ数字(ⅤとかⅩとか)だったのが、今のようなアラビア数字に変わっていったのだそうですが、昔はもっとフニャッとした書き方だったりしたそうです。写真左端の時計の解説文は面白いですよ!

「ドイツで作られた飾り柱付きの掛け時計の中でも、この時計ほど個性の強いものはない。優雅とは、およそかけ離れたスタイルと『おどろおどろ』した文字盤の文字、文字盤のホーローの色も変わっている。1955年 ドイツ製」。

「おどろおどろ」って…。確かに、そう見えて来ますけど。
金田一耕助の映画にでも出て来そう。(笑)

さてさて、もっとご紹介したい時計がたくさんあるのですが、長くなりました。
続きは、また次回といたしましょう。

中村時計博物館
高知県南国市後免町1丁目5-26
電話:088-864-2458