第1190回 「ネーミング」
12月20日 中村 覚
「この子のお名前は?」
(いえ、自分の子ではありませんが…)内心 そう思いましたが
「ケンウッドです」「男の子ですか、女の子ですか?」と、この後もやり取りが続いたと記憶しています。
これは、初めて動物病院へ飼い犬を連れて行った時のやり取りです。
今から20数年前だと思いますが、「この子~」と言われた事はショッキングでした。「犬であって、子ではない」みたいな(笑)
ちょうどこの犬を飼い始めた時にずっと欲しかったオーディオを買ったので、名前はそのオーディオの会社名をそのまま取りました。しかし、人の前であらためて犬の名前を言うなどとは、あまり考えたことがなかったので、病院に連れていって以来、犬の名前は少し考えるようになりました。いまだにずっと柴犬を飼い続けています。
年月が経ち次の犬を飼い始めた時です。やっぱり、名前から来る言葉の響き、イメージと言いますか、そんなことも考えた方が良いと思い、新しい犬の名前は「うんとこしょ」にしました。どこか昔話を思わせるクラシックな感じで。
ところが、ある時、友人が家にやってきて犬とご対面。「うんとこしょ」と名前を言うと、少し犬と遊んでから、「中村、どっこいしょは、どこにおる?」と半笑いです。とても失礼なヤツでした。もう少しまともな人だと思っていたので、犬と会わせてやったのに。
そしてまた次の新しい犬を飼い始めた時です。考えてみれば、何度も何度も繰り返して呼ぶのが名前。呼んだ時に楽しくなる名前が良いなと思い、今度の犬は「とことん」。最初の「と」の部分にアクセントを置いて呼びます。そうすると理由はわかりませんが、呼ぶ度に楽しい気分に!でもこれが仮に2番目の「と」にアクセントを置くと、なんだか努力、忍耐、根性を強調する時の「とことん」になってしまい、重たくなってしまうのが不思議。イントネーションも大事ですね。
まだ幼かった甥っ子と一緒に近所でとことんを散歩させていた時です。前から高校生ぐらいの女の子が2人、1匹の犬を散歩しながらこちらに歩いて来ます。「ベルちゃん、ベルちゃん、だめよ、そこでウンコしちゃ。」よく見るとベルちゃんは小型の洋犬。見るからに番犬ではなく室内犬。お似合いの名前だことで。すると小学生だった甥っ子がうちの犬を指さして耳元でささやきます。「おんちゃん、犬の名前、呼ばれんで。」子供心に「これはマズいっ!」と思ったのでしょう。前から来る犬の名前はオシャレ過ぎる! そっかぁ?
そこそこ イケてる名前なのに、なんで? でも、それを言っても小学生にはまだわからないかぁ。難しい名前だからなあ。
そして、今、飼っている犬です。元々の飼い主の家にもらいに行った時のことです。その時はまだ、どの犬をもらうのか決まっていませんでした。庭に入ると数匹いる内の1匹がこちらに喜んでかけ寄ってきます。シッポを振って舌を出し、どう考えても初対面じゃないみたい。「お前、うちに来るか」と声をかけた時に「来るか」→「くるか」と名前が決まりました。「くるか」今までで一番、あか抜けしているかなと。これまでがひどかったので。
ある日、母の友人が家に来ました。動物全般が大好きという雰囲気満点の方で、犬とも遊んでくれます。犬も大喜び。「中村さん、ワンちゃんの名前は?」「くるか」と母が答えます。「まぁ くるかちゃん!」よしよしとよく遊んでくれました。犬にも相手が動物好きというのがわかるみたいです。
そしてそれからまた来た時、前回同様 玄関でまずは犬と遊んでくれました。
「おぉよしよし あんた名前は… 来て、おいで、もろうて、誰やったっけ?」
全部、違います! くるかです。
ネーミングって難しいですね。

