第1160回「追手前 校友会講話2025」

5月24日

先日行われた、追手前高校新入生対象の「追手前高校学 147年間の奇跡 校友会講話 閣下とジェーンさんの話」。なんとも遊び心のあるタイトルですよね。御年93歳の旧制中学校ご出身の井上博史特別顧問(通称:閣下)に、色々なことをお伺いしました。

閣下は旧制城東中学校と新制追手前高校の端境期に在校なさり、昭和25年にご卒業。旧制中学校の最後の学年でいらしたそうです。その後コンサルタントとして海外でもお仕事なさり、長く校友会副会長として尽力なさって追手前のことなら何でもご存じの、生き字引のような方です。45分間の話の内容は、

1.沿革(学校の歴史)
2.旧制中学校の学生生活
3.校舎について
4.戦後の変化
5.やなせたかしさんの話
6.伝統とは

写真のように、最初は左右に分かれて聞き手の生徒さんとやりとりしやすいようセッティングしたのですが、いざ始まると閣下がマイクを通した私の声が聞こえないというアクシデントが発生!スピーカーの向きの問題でしょうか、機械を使うとトラブルは起きることがあります。閣下がパソコンのある私の机に移動してくださって、一件落着。
「これがリアルですね」と生徒さん達に話したことでしたが、それからは順調に進みました。

高知空襲の話は初めて聞く生徒も多かったようです。空襲で焼け野原になった中、高知城と追手前の校舎がポツンとたたずんでいる写真や、閣下が体験なさった空襲の情景のお話は、生徒さんにも衝撃的だったようです。そして軍国主義から民主主義への転換、教育制度の変化、男女共学化など…。

朝ドラでやなせたかしさんご夫妻をモデルにした「あんぱん」が放映されている今、タイムリーなお話も。創立120周年文化祭に閣下がやなせさんと横山隆一さんに「絵を展示して頂けませんか?」とお願いに上がったところ、お二方とも快く2点の大きな未発表作を出してくださった(しかも梱包料や保険料は先生方持ちで!)エピソードを懐かしく語っていらっしゃいました。

追手前にはシンボルキャラクターの「OO(オー)くん」と「銀杏のギンコちゃん」がいますが、これらも閣下が学校の依頼を受けて、東京のやなせ先生にお願いに上がったことをお話しなさっていました。東日本大震災が起こり、90歳での引退を取りやめ、生涯現役で被災地支援も行ったやなせさんは「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」という信念通りの人生を貫かれたのですね。

最後に、「伝統」について。閣下は「古いということに固執することは伝統ではない。新しい時代に向かって、いかに社会や国のために尽くす人々をどれだけ輩出するかが、生きる伝統だ」とおっしゃっていました。これに生徒さん達はとても感銘を受けたようです。

後日、感想シートをおよそ200枚送って頂きました。読むと皆さんにどこがどう響いたのかがわかるので、とても勉強になります。この講演会の主役である、新入生の皆さんはどう感じたのでしょうか。

・日本の第二次世界大戦前~終戦時~現代の移り変わりとともに、その当時の先輩方がいたということが実感できました。今の追手前高校では、考えられないようなことが起こっていたことを初めて知りました。

・鏡川にたくさんの遺体があったことや、時計台の周囲の建物が焼けたこと、戦後の記念写真では制服も着れない状況だったことが衝撃で、この校舎も戦争と深く関わっていたことが分かりました。

・閣下の頃の追手前では戦争に向けての活動が生活の中心で、勉強どころではなかったと知りました。そのため、今当たり前のように勉強できているのは当たり前のことではないと理解し、その環境に感謝し、文武両道で何事にも一生懸命取り組んでいきたいと思いました。

・高校に入学してからずっと、先生方が非常に追手前高校に誇りを持っているなと感じていました。私も憧れを抱いて入学しましたが、なぜそれほどまでに誇りを持っているのか理解しきれていませんでした。しかし、今日お話を聞いて、それがとてもよく分かった気がします。

・やなせたかしさんは90歳という年齢になっても、東日本大震災で被災者のことを考えた行動を聞いて、その年になってまで行動しようとする気持ちが、とても素晴らしいと思いました。

・追手前に入学してからたくさんの不安がありましたが、その中で一番心配だったのは、高知にとどまって視野が狭いままになってしまうことでした。正直、追手前は楽しいですが、勉学以外は周りを見ると言うより、古い伝統を守ることに意識がいっているので少し怖かったのですが、先人たちの言葉でそれがさっぱり消えました。伝統というのは古いだけでなく、未来に向けてでもあるという言葉は素晴らしいと思いました。

・私も『追手前人物列伝』に載るようなすごい人になるので、待っていてください。

なんて頼もしい!(笑)いいなあ、この熱意。

「戦時中の話を初めて聞きました」という声があると、語り継ぐことがいかに大事なのか、改めて認識できました。私も、もっと勉強しなくては…

追手前高校との交流の機会を頂くと、そのたびに自分の内なる熱いものが湧き上がってくるのがわかります。ご質問も頂いていますので、お答えを返すことで校友(卒業生)との繋がりを実感して頂けますよね。「学びになることが、喜び」というのが私の価値観ですので、頑張って取り組みたいと思います。