第1167回 「時の流れ」
7月12日 中村 覚
もう数年前になると思いますが、近所に古書店ができました。こじんまりした店で駐車場は2~3台。いつも軒下にはワゴンセールの商品が置いてあり、雨の日はワゴンを店内に入れています。ですので、どこか懐かしさを感じる店が近くにできたことが嬉しくて、開店当初 目当ての本もないのに一度 伺いました。
開店が嬉しいとか、懐かしいとか書いておきながら、行ったのは1回だけ?と思われるかもしれませんが、そうです、1回です。私はこういった雰囲気が好きなだけで、本自体はそれほど好きではありません。でもこれまで店の前を通った回数といったら300や400ではききません。近所ですから(笑)
話を戻します。最初に行った時に1冊購入しました。「私、近所なので よろしくお願いします」とオープンの雰囲気に流されるままに。でも言葉にして言わなかったので、もしかしたら そのあたりの事はお店の人にはわかってもらえてないかもしれません。
一ヶ月ほど前です。探している本があって、アマゾンやオークションなどでも検索をかけるのですが なかなか見かけません。そうだ、近所のあの古書店に行ってみよう。オープン以来の2回目。
結果、探していた本はなく、でも面白そうな本があったので買ってきました。それがこちら。「エンデュアランス号 漂流」です。
(この写真は、私が読んだ後です。当初はきれいな状態でした)
後から知ったのですが、このエンデュアランス号は有名な実話です。
時は1915年、大英帝国南極横断探検隊。乗組員28名は危機的な遭難を経験し船は南極沖に沈没。その後、幾重もの困難を乗り越え ついには全員奇跡的な生還を果たします。ネタバレはいいのか? と言われそうですが、本の裏表紙に事の顛末である「奇跡的な生還を果たす」と書いてありますので、これぐらいは許してもらえるのではないかと。醍醐味はどのように困難を乗り越えたか、これにつきると思います。
この本が本当に面白くて、ずいぶん楽しませてもらっています。4分の1ほど読んだところに、宣伝の小冊子が挟まれていました。この本の前の持ち主は几帳面だったんだろうな。考えてみれば帯もきれいな状態だし本の四隅もピンッと張った感じがあり、大事に本を扱う人だったのかな、と。もしくは買ってすぐに売ったのか(笑)どっちなのかはわかりませんが、おかげで私は著しくきれいな状態で本を読めているわけです。
読み進むとまた、以前の持ち主が挟んでいるものが出てきました。まずはレシート。いつ、どこでこの本を買ったのかが、わかりました。
宮脇書店 中村店
2001年7月2日(月)10:37
場所は宮脇書店の中村かぁ。日時は今から24年も前です。この本の発行日は平成十三年七月一日。平成十三年は西暦2001年ですので、発売された当初に購入をしたことがわかります。朝の10時37分。高知市内から仕事で中村市(現・四万十市)に来ていて、合間の時間に本屋に立ち寄って購入したのかなと。当時はまだスマホもありませんので、新しい情報となると自然に本屋に足が向いたのではないかと思います。
なにを勝手なことをと思うかもしれませんが、実は名刺も挟まっていたのです。当然、会社名と役職も書いてあり、会社の住所が高知市内だったので、そんなことを考えました。
名刺のことはさて置き、私はこのレシートにジ~ンときました。私は今年48歳。今から24年前のレシート。私のこれまでの人生のちょうど半分の時に、前の持ち主はこの本を買ったのです。その後 本を手放し それが近所の古書店にたどり着き、たまたま目にした私が24年後に購入…。
時の流れの偶然の出来事でした。