第1166回「熟れる(こなれる)」

7月5日             中村 覚

いまだに慣れないのですが、初めての外食先ではそわそわしてしまいます。嬉しくて期待から来るものではなく、なにか落ち着かないのです。「新参者ですみません」といった感じがどこかにあるからでしょうか、いつになったら慣れるのかと思うのです。

でも新発売のアイスを食べる時は(バニラ限定ですが)、無意識のうちに「〇〇の方がおいしいな」とか「甘すぎず、これだと2~3個は食べられるかな(いや、無理かな)」など頭の中で勝手に審査員?がジャッジをし始めます。バニラ味に限っては昔からよく食べてきたので、比較対象をするデータが蓄積されているせいかと。でもこういったことは、誰しもお持ちのはず。

この間、知り合いからワインをもらいました。日頃からアルコールはあまり飲みません。月に一度くらい350mlのビールを一缶、腹に革命をおこすために飲むぐらいです。

せっかくもらったので乾杯。理由なく乾杯。味はというと「ジュースやん。これジュースや。」日頃 ワインは飲まないので味覚が素直?なんです。ああだ、こうだと理屈をこねません。アルコールなのにワイン=ジュースとインプットされます。

多分、違うでしょう。今後、もし色々飲む機会が増えていけば、アイスクリーム同様、頭の中でうんちくが始まるのだと思います。何かを失い 何かを得る。
こうやって初々しさと引き換えに、こなれて世に染まっていくのです(笑)

先日のこと、100円ショップの駐車場が満車でした。そもそも20台程しか止められないので無理もありません。仕方ないので、すぐ隣のスーパーで用事を済ませて、それからまた来ようかと。

そのまま駐車場を出ようとすると、ちょうど左斜め前に駐車してあった車がエンジンをかけてすぐに出ました。ちょうど良かった、空いたスペースにゆっくり頭から入ろうと。すると、私と同様この場所に入ろうとしている車が前から来ました。お互い目が合い「!ッ」 一瞬止まって、お互い次にしたのは「どうぞ、どうぞ」とジェスチャーでの譲り合い。こういうのは日本ならではなんでしょうか?よくわかりませんが(笑)たいして急いでいない2人がばったり鉢合わせといった感じでしょうか。

相手の方もそうだったと思いますが、私の「どうぞどうぞ」もわりと本気でした。そもそも隣のスーパーに行くつもりでしたから「ホントにどうぞ どうぞ」とジェスチャーの手を大きく振り、車をバックして譲りました。
出口へ進む時に、駐車し終えたさっきの運転手と目が合います。

なんと会釈をしてくれながら両手を顔の前で合わせてくれているのです。ちょっと、ちょっと「死んでない、死んでない。手は合わせないで(笑)」
かなり気恥ずかしくなりました。年のころは私と同じぐらいの女性です。

初詣でなどで手を合わすことはあっても、手を合わされることはありません。
相手がよほど良い方なのはわかります。駐車場を譲ったぐらいで…。こんなのは初めてです。そして手を合わされたら人間どんな気持ちになるのか? 妙なもので、わるい気はしません(笑)

で、なぜが思ったんです。お墓に入った後はこんな気持ちになるの? いや、そんなわけないだろう。何事もそうですが、繰り返すうちに慣れてきて、こんな気持ちは最初のうちだけに決まっている(笑)

回を重ねるうちに、お参りとしてくれている人に「ん~、今回はちょっと首の角度が浅いなぁ」「手の合わせ具合に気持ちがこもってないかなぁ」などだんだん意見し始めるのではないかと(笑)私が思うということはご先祖様にもこんな人、いたんじゃないかな。そうならないように気をつけなければなりません(笑)

そんなことを思うのはお前ぐらいやと友人には言われましたけども。

 

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