第959回 「安田町の名建築①~旧市川医院」

6月19日

先日、県東部での仕事帰りに中村が「ここ通ってみましょうか」と言って、安田町の国道から一本北にある通りの近代和風建築を見せてくれました。
一目見て「これはいい!取材に来よう!」と即決。
それが、「安田町まちなみ交流館 和(なごみ)」です。

実はこちら、旧柏原邸・旧市川医院という2つの建物がつながっている、大変珍しく貴重な和洋折衷建築なんです。旧市川医院は大正2年、旧柏原邸は昭和7年に建築されました。当時豊富にあった馬路村魚梁瀬の天然木をふんだんに使った見事な建築です。

時代が変わり20年近く空き家で傷みが著しくなったこともあり、平成20年には所有の方から安田町に寄贈されました。平成22年(2010年)に修復が完了し、安田まちなみ交流館「和」として生まれ変わりました。もう10年以上になるのに、全然知りませんでした。平成24年には、国の登録有形文化財にもなっている名建築です。

では、市川家と柏原家の関係は?
初代の市川先生の娘婿が、柏原さんなのだそうです。だから建物もつながっているんですね。

まずは左側にある旧市川医院。大正の面影が感じられる、たたずまいです。
南北に細長い構造になっている平屋の洋館で、外壁はガラス窓に板張り。
庭木の後ろの屋根は正面のみ寄棟造で、後ろは切妻造です。
(写真はクリックで大きくなります)

何と言っても、この玄関が大正時代を彷彿とさせます。
急勾配の屋根は、先の尖った棟飾りがシンボリックです。

それと対照的な、下を向いた木の飾りもおしゃれな感じです。

上部の小さな窓と、レトロな灯りがいいですねえ。

さて、玄関から中へ入ると、片廊下式になっています。

修復前の見取り図では、玄関から順に調剤室、レントゲン室、診察室、処置室と並んでいました。現在は資料展示室として、企画展などが開かれています。
手前の部屋は現在、事務室として使われています。

旧仮名遣いの「投薬口」は、その名残です。
画面を大きくすると、大正ガラスを使っているため、景色が歪んで見えるのがわかります。

ここは昔、レントゲン室だった部屋です。
照明も大正レトロ。天井の桟からチェーンで吊されています。

引き戸も当時の物を磨いて使っているようです。下のレールも木製ですが、スムーズ。
しっかりとした造りなので、今でも使えるのでしょうね。

こちらは診察室と処置室。壁に大きな型板ガラスが埋めこまれて、
当時は明るくモダンな雰囲気だったのでしょうね。

大正2年の地方の医院建築が 令和の今も安田町の方々のご尽力で残り、
内部も見学できるよう整えられているのが感無量でした。

次回は、豪奢な和風建築の旧柏原邸をご紹介致します。