第1033回 「高知の名建築、織田歯科医院①」

11月26日

近代建築好きの皆さま、お待たせしました。高知県の誇る近代建築、織田歯科医院の登場です!先日、追手前高校が国の登録有形文化財になるというニュースをお伝えしましたが、織田歯科医院も2017年に国の登録有形文化財になっています。

実は偶然「文化財を楽しむ」という、高知文化財研究所の溝渕先生が建築を解説なさる講座を知ったのです。それがなんと織田歯科と追手前高校を尋ねると知り、ぜひ!と参加しました。織田歯科は一般公開されていないため、念願が叶いました。

織田歯科医院は、大正14年(1925)に建てられた、鉄筋コンクリート造りの洋館です。二代目院長の織田正敏氏によって建てられました。高知で現存する中では、最も古い時期の鉄筋コンクリート造り建築でしょう。
当時、専門で鉄筋の建物を建てる人は高知におらず、設計者は不明です。

壁は、大正期のモルタル洗い出しという手法。セメントモルタルに砂利などを入れて塗り、固まる前に表面を水で洗い出し、砂利などを露出させる方法です。高知は風雨が強いため、大正時代の外壁の仕上げはこれが多いとか。

門柱はドイツ風のデザインです。
昭和20年の高知空襲の時、高知市街地の7割が焼失しました。この建物にも30個ほど焼夷弾が落ち、うち5個が燃え上がったそうです。その焼け跡が塀に残っています。

真ん中の、モルタルが剥がれ落ちているのが焼夷弾の痕だそうです。
この塀も、医院とは別に 有形登録文化財に指定されている貴重なものです。

外壁の中央部と、1階と2階の窓の間には、メダリオン(立体的な装飾)が付いています。縦長で、アクセントが効いていますね。

屋上中央には、バロック調の装飾も見えます。

屋上の左にはペントハウスがあり、上に紋章が見えます。
これもドイツ、フランスのバロック系統のようです。

窓は木製の上げ下げ窓で、全部木製のものが残っています。

看板は古い時代を模して作られたもの。
建物とよく似合う、レトロなデザインです。

玄関は両開きです。

ひさしの屋根は「照り起り屋根 (てりむくりやね)」と言って、反り(そり)とむくり(膨らんでいる形態)が両方ついている、めったにない屋根だそうです。

現在、織田歯科医院は隣の新館に移り、この洋館は ウエディングプロデュース会社「レ・プリュ」が借り受け、挙式や披露宴会場として使われています。100年近い洋館ですから、「末永くお幸せに」と縁起がいいんでしょうね(笑)

では、いざ中へ!というところで、次回に続きます。